残り3カ月で偏差値はどこまで伸びるか

志望校の絞り込み方について伺います。残り3カ月を切って、具体的に受験する学校を決めなければなりません。例えば偏差値が50の子は、どのレベルまでチャレンジしていいのでしょうか。

西村:現状の偏差値からプラスいくつまで可能かというのは、子供によって違います。例えば普段の模擬試験で基本だけはちゃんと取れているけれども、応用部分になると途端に出来が悪くなるという子の場合、残りの期間で努力してもプラスアルファは考えにくいですね。伸びしろは、あまり大きくない。

 ところが、基本部分でぽろぽろと失点はあるけど、意外に難しいのも解けちゃっている子の場合、勉強方法を工夫すれば偏差値でプラス10ぐらいまで受かることがよくあるんですよ。偏差値が50の子だったら最高60のところまで。その代わり、抑えも40ぐらいの学校を考えておいた方がいいです。

 伸びしろがあまりなさそうな子の場合、あまり欲張らずにせいぜいプラス5ぐらいを限度に考えるべきですね。

どこの塾の偏差値を信じれば良いのか?

 あともう1つ重要なのは、受験校を選ぶ際には偏差値だけではなく、問題の傾向を見るべきなんですね。例えば、記述が多い学校なのか、それとも選択問題が多いのか。傾向のまったく異なる学校の勉強を両方やるのは大変です。よく似た傾向の学校に揃えれば、別の学校のことをやっていても、もう1つの学校の方にもプラスがあります。

偏差値は学習塾ごとに変わりますが、どこの値を見て判断すれば良いのでしょうか。

西村:まずSAPIXについては、最難関校の偏差値は信頼が置けると考えています。なぜかと言うと、その辺りを目指す子がSAPIXに一番多いからですね。ところがいわゆる中堅校を目指す子はSAPIXに少ない。中堅校について一番信頼が置けるのは、四谷大塚や日能研の偏差値だろうと思います。やはり規模が大きいので、母集団が多いのが根拠です。

11月、12月、1月の学習ポイント

11月以降、勉強するうえでポイントはありますか。

西村:先ほども申し上げた通り、時期によって学習のやり方は切り換えた方が効果が上がります。苦手単元の克服は、できれば10月いっぱいで終わらせておくのが理想です。とは言え、苦手なところはどうしても残る。つまり何らかの原因で子供の生活履歴の中で苦手になってきてしまったということですから。だからやっぱり成績はその部分は上がりにくい。直前期に苦手単元ばかりをやっていると、4教科全体の合計点は下がってくる。これは嫌ですよね。

 そこで11月からは、総合的に点数を上げていくことをおすすめします。簡単に言うと得意部分もがんがんと勉強していいのが11月から。得意単元をやっていると気分がいいので、子供の表情が明るくなるんですね。合格できるんじゃないかと思い始める。本番を目の前に、自信を付けていくという効果もあります。

 12月になったら過去問中心の勉強に切り換える。塾によっては、過去問は年明けからでいいと指導しているところもありますが、やはり過去問は少しずつでもいいから早期から取り組んでもらいたいと思います。

 過去問をやると、この部分の知識が抜けているというのがふと見つかります。その穴は、その場でふさいでいく。12月からはこうした学習を毎日繰り返すのです。と言うのは、子供は記憶力がいいのですぐ覚えるんですけど、すぐ忘れるんですよね。でもさすがに12月に覚えたことは2月1日までは覚えているだろうと、そこを使うわけです。

 例えば理科の植物とか動物なんて、チェックテストがあるので前日頑張って覚える。翌日のチェックテストはいい。でも1カ月後の模試ではほとんど忘れているということがよくあります。だから入試直前の2カ月間というのは、基本知識の確認作業が重要なんですけど、これをまたテキストや教科書を引っ張り出してやるのは大変です。だから過去問の中で気が付いたところを、ぱっとその場で狭い範囲だけでいいから復習するのが大事です。

より志望校にマッチした基本知識を再確認する、ということですね。

西村:そうなんですよ。さすがに受験2カ月前だから記憶もそんなに薄れないだろうということですね。1月になったら、首都圏の場合、千葉県や埼玉県の受験も始まりますから、まさに臨戦態勢です。

緊張を和らげる方法、受験当日の心得

受験前、緊張しちゃっている子にどう接したらいいのでしょうか。

西村:普段の模擬試験でも、例えば月例テストは落ち着いてやるのに、大事なクラス分け試験となるとだめな子っているわけです。ここは頑張らなくちゃいけないと思った途端に、肩に力が入って実力が出せなくなる。緊張に弱い子ってやはりいるんですね。

 そういう子の状態を横で見ていると、ほぼ全員、呼吸が浅いんです。何かハーハー言いながら勉強している雰囲気ですね。緊張すると深呼吸しなさいとよく言いますよね。腹式呼吸で深く息をすると気分を落ち着かせる効果があります。腹式呼吸とは、息を吸うとおなかが出て、吐くとおなかがへこむという横隔膜の運動をしてあげるということです。息をゆっくり吸い、大きく吐くということを習慣付けておくと、緊張感が高まったときに和らげる効果があります。

 例えば、入試の当日。学校の校門で塾の先生方が待っていて、頑張れよとか声をかけていますよね。

塾ごとに集まって、気合いを入れていますね。

西村:あのとき、先生は頑張れよと言って握手します。きっちりと握り返せる子は大丈夫なんですよ。ところが、手に力が入ってない、もしくはやって来たときの顔の表情が真っ青とか、逆に真っ赤とか、こういう子は危ない。この子、危ないと思ったら、ちょっと後ろの方に引っ張り込んで、「深呼吸してごらん」と声をかけたりしているんですね。ですから普段から腹式呼吸の練習をしておいた方がいいですよ。

 もう1つは直前でいいので、イメージトレーニングをすること。入試本番その日のイメージトレーニングですね。まず朝何時ごろ起きて、顔を洗って歯を磨いて、朝ご飯を食べてということを、子供自身が声に出しながらイメージしていくんですね。

声に出すと、具体的にイメージが頭に浮かぶ。

西村:はい。その次、持ち物をちゃんと調べ終わった後、まず計算の面倒くさいやつを2問やる。計算練習ですね。あと、新聞の「社説」のできるだけ難しそうに見えるところを20行から30行読む。

 受験当日、起きて初めて見る活字が入試問題だと頭が働かないんですね。同じように、起きて初めて扱う数字が入試問題だと、これまたダメですから。計算練習も少しやって、難しい文章も少し読んでおく。それでその後、何時に家を出て、何時に駅に着いて、試験会場の教室に入るまでをイメージトレーニングしておく。そこには当然、塾の先生がいっぱい待ち構えていて、ほかの塾の先生もいてすごく混雑している様子も思い浮かべさせてあげる。そこまでしておくことが必要です。