過去問をやれば、捨て問を見きわめることにつながりますか。

西村:はい、学校ごとの出題のくせを知るうえで過去問の演習はとても重要です。ただし、とにかく過去問を繰り返しやればいいわけではありません。過去問をやる際には問題の「量」と「質」に応じて、それを40分とか50分の考査時間の中で何割取れば合格圏内に入るか。それを自覚したうえで解かないと、意味がないのです。

 とりわけ質をもっと細かく分析すべきなんですね。どういうことかと言うと、例えば国語。「太郎くんの気持ちを書きなさい」という問いがあったとする。同じ設問でも、学校ごとに要求されているレベルが違うんですよ。

 ある学校はまさに文字通り気持ちだけを書けばOK。ところが上位校になればなるほど、その周辺情報や理由を書くことが要求される。もしくは太郎くんの心情を表す情景を書く必要がある。この学校はどのレベルを要求しているのかを知るには、解答欄の大きさや模範解答に書いてある内容などを見比べて判断しなければなりません。

 要は相手が何を求めているのかと分かったうえで試験に臨まなきゃいけないし、過去問も取り組まなきゃいけない。それを自覚しないで過去問を繰り返しやっても、あまり意味がありません。

そうすると過去問をやるのにも時間が結構かかりますね。試験を受ける学校は、少ない子でも2~3校。多い子は5校ぐらいになりますが、受験校すべての過去問をやらないといけませんか。

西村:やはり受ける予定の学校は、全部やるべきです。抑えと思っている学校で万が一のことが起きると、精神的にも辛いですから。

 第1志望は5年分必ず。第2志望も5年分ぐらい、まあ、4年でもいいかな。それ以下の学校については少なくとも3年分はやっておいてほしいですね。それを4教科分やるとすると、かなり時間がかかりますね。

 ただ、単純に問題を解いて、できなかった問題をやり直せばいいのではありません。先ほども申し上げましたが、ほとんどの過去問集には何点取れば合格ということが書いてあります(編集部注:学校が合格最低点を公表しているケースもある)。なのでお子さんの点数が合格点に達しない場合、じゃあ、どこで点数が稼げたはずなんだろうという見方でテストを振り返る。バツの問題を全部、機械的に解き直すというのは意味がないんです。あと10点取れれば合格圏であれば、余裕を見てプラス20点を目指す勉強でいいんですね。

2学期からは「得点力を付ける勉強」に切り換える

なんか、希望が見えてきました。50点しか取れなかったからあと50点分勉強しなければならないと考えると気が滅入ってしまいますが、あと10点か20点取るために何をすればいいかと考えれば良いということですね。

西村:そうです。プラス10点の計画ならば、ずっと作りやすいはずです。間違った問題も、単にケアレスミスだったのか。あるいは問題の意味を取り違えていたのか。それによって勉強の仕方は大きく変わります。間違った問題を上からずっと機械的にやり直していくのは、効率的な勉強方法とは言えません。

 受験までに残された期間はわずかです。そんな時に、べらぼうな量の勉強をこなさなければならないと思うと、子供じゃなくても気が滅入ります。そうではなくて、子供自身が「これぐらいだったらやれるかな」と思えるように、親が適切な勉強量を管理してあげないといけません。

 もうちょっと踏み込んで申し上げると、6年生の1学期までは「学力を付ける勉強」をする。ところが2学期に入ったら「得点力を付ける勉強」に切り換えていかなければなりません。

得点力を付けるとは、取りやすい問題を見極める嗅覚みたいなものを身に付けるということですか。

西村:解きやすい問題を見つけ、解けるはずの問題で必ず正解を出す。その両方が得点力を付ける勉強です。ですから家庭学習だけではなくて、塾の勉強でも、6年生の2学期を過ぎたら、お子さんの気持ちを切り換えていかなくちゃいけないんですね。

 1学期まではまじめで意欲のある子供たちほど、授業をよく聞いて、帰ってから復習しようとします。これがいい子、学力の高い子です。ところが2学期以降も同じことをやっている子は案外、成績が伸び悩むのですよ。2学期を過ぎたら復習が大事なのではなくて、その授業中の演習時間内で、どんなことがあっても正解を出してみせるという意欲が重要となります。

 例えば授業中、先生から15分で3つ問題を出されたとする。問題をざっと見て、自分は全部は解かず、第一問だけ解こうと決めたらそれでいいんです。その代わり、その問題だけは必ず正解を得るようにがんばる。普段の授業でも、そういう風に気持ちを切り換えてほしいですね。

 だから私はお子さんに演習させる場合、「じゃあ、この3問、やってみようか。何からやる?」と言葉をかけます。もう少し進んでくると、「この3番、やる方がいいと思う?捨てる方がいいと思う?」とまで聞きますね。やる問題とやらない問題を分けると、子供は限られた時間で自分が解くべき問題に集中できるのです。

志望校の出題傾向をどう把握するか

入試が近づいてくると、各塾で志望校別の特訓コースが開かれます。どのように活用すべきですか。

西村:自分が志望する学校のうち、開成コースとか、灘コースとか、1校だけの名前が付いた特訓コースがあればぜひ活用すべきです。そのコースに入るには偏差値で下限が設けられている場合もありますが、そうしたトップクラスの難関校で合格者を増やすことが、学習塾にとって経営上極めて重要です。そのため傾向分析に力を入れていますし、合格させるノウハウを蓄積しています。

 問題はトップクラスの学校のレベルに達していない子供たちです。そういう子は「ハイレベル」などの名前が付いたコースに入ります。その場合、中堅レベルの学校の過去問をいくつか解いて、その解説を聞いて帰ってくるだけ。そうなると結局、自分の志望校がどのような出題傾向にあるのかを分析するのは親御さんの役割になってくるので、えらい大変なんですよ。

十把ひとからげ、ということですね。やっぱり学校別の特訓コースに入れない子は、親が受験校の傾向を分析して子供を導いてやる必要があるということですか。

西村:そうですね。高校生だったら自分でいろいろできるんですけど、さすがに小学生でそこまで分析しろというのは難しいですね。

 ただ、塾に通っているのであれば、担任の先生などに相談してみたらいかがですか。うちの子、どうも算数の割合が苦手だと思うんですけど、どの問題集のどこを復習させればいいですかとか、聞いてみたらいいでしょう。塾の先生は味方ですからね。最大限活用すべきだと思います。