今日できなかったことは明日引きずらない

そうは言いましても、子供がふさぎ込んじゃっている場合、どういうふうに接したらいいのか悩みます。

西村:まず、切り分けなくちゃいけません。親が焦っていて子供がのんきな場合、これはだいたい親の言動が子供のやる気をなくしていくんですね。これをやらせなくちゃいけない、それをやらせていくうちに別の欠点に気が付いて、またその基本に立ち戻る。それをやらせるとまた欠点に気が付く、という風にやらせることがどんどん増えてくるタイプの親。特にお母さんが多いんですね。

 子供に何かをやらせなくちゃいけないと思ったとき、すぐに声に出しちゃいけないんですね。まずそれをメモしておく。いくつか溜まったときに、その中で優先順位を決めるという冷静さが必要になるんです。そして、優先順位の低い事柄を捨てる勇気も大切になります。

 思い付きでどんどん子供にやらせることを増やすと、子供のやる気がどんどん下がっていきます。子供からすれば、そんなにたくさんできないよという気持ちで、やる気が失せていくのです。

我が家の場合、朝にTo Doリストを作りますが、たいがいはすべてが終わりません。そうすると今日も3個残った、昨日は2個だったとか、じゃあ、週末時間があったときにやろうと言っても、だいたい時間はない。やるべきリストがどんどん溜まって、何かいつもやりきってない思いが親にも子供にもあります。

西村:それが普通です。ならばリストをリフレッシュする機会を作ったらどうですか。夜寝る前、To Doリストは丸めてごみ箱に捨てる。それも子供の目の前で。そうすれば、お子さんの顔はきっとパッと明るくなりますよ。

 過去は振り返らないということを親が態度で示すのです。子供が気分よく学習を続けられる環境をつくることが親の役割ですから。これって、受験学年でなくても、5年生ぐらいでもよく聞く話です。宿題がどんどんたまっていくと、それだけで勉強が嫌いになってしまいます。そういう場合、よし、もうやらないでいいよ、もう過去のことは忘れようと言ってやると、そこから先、勉強するんですね。

受かるはずの子が落ちるのは母親のせい

悪い流れを一回、断ち切ってあげるということですね。

西村:そうです。昨日までの自分とはさよならをして、今日からちゃんとやろうということです。

 普段から「そんなにやる気がないんだったら不合格になっちゃうよ」と言われ続けていると、子供は今さら頑張っても合格しないという気持ちになってしまうんですね。だから「頑張ってもムダ」という気持ちを断ち切ってやらなくちゃいけない。

 ですから、今からが本番だということをいつの時点からでもいいから言ってあげる。実際、子供の成績は最後の1カ月でもずいぶんと伸びますから。受験日まであきらめる必要は全然ないのです。

子供は伸びしろの固まりだと。

西村:そうなんですよ。だからチャレンジ校に合格するというのも、結局最後の1カ月間、頑張れるかどうかなんですよね。しかも合格しそうだという予感の中で勉強できるかどうか。ああ、だめだ、だめだと思うより、あとちょっとで手がかかると思えば最後まで頑張れますよ。

 逆に、12月に行う最後の合否判定テストで合格可能性が80%を超えていても、落ちてしまうお子さんがいる。これって、親の不安が子に伝染して、焦って不合格になるケースがあります。

なるほど。やっぱり受験は親が9割、ですね。

西村:実力からすれば合格するはずのお子さんがその志望校に落ちる、ということが残念ながらよくあります。あえて言いますが、これはほとんど全部、お母さんの影響です。

 過去30年間以上、受験生とその親を見てきた私はそう言い切れます。そういう母親には共通点があります。完璧主義者だと言うことです。あれをやらせなくちゃ、これをやらせなくちゃと、直前になればなるほど勉強しなければならない量がどんどん増えていく。それをこなせないことで子供が不安になり、本当の実力を発揮できない場合が多いのです。

反抗期の子供への接し方

母親だけとは限らないと思いますが、どうしても他のお子さんと比べて、自分の子供のできていない部分に目がいってしまいがちです。

西村:子供というのは他人と比較されることを嫌います。反抗期の場合、特にその傾向が強いです。女の子の場合、小6ぐらいから反抗期って強くなりますから。

 子供が反抗期だと思ったら、むしろ喜ぶべきなんですよ。体だけではなく心も順調な成長してきた証なのですから、まず親が安心すること。受験前にこんな反抗期になってどうしよう、ではないんですね。よかったと思えばいいのです。そういう生意気な口が利けるようになって、お母さん嬉しいわ、でいいわけですね。

 反抗期は勉強の面でもプラスがあります。女の子は反抗期が早めに来るので、男の子よりも読解力が優れているという見方もあります。反抗期というのは、要するに規範に対する反抗、もしくは親に対する反抗。これって、国語の読解問題のテーマになるケースが非常に多い。ですから反抗期に入ったお子さんは、登場人物の気持ちがよく分かるようになります。

合格圏まであと何点必要かを考える

直前期になると毎週のように模擬テストがあります。どう取り組めばいいですか。

西村:この時期の合否判定テストというのは、合格の可能性を探っていく。言い換えれば、志望校にうちの子が合格するためには、ここはそのまま残し、ここはちょっと修正してあげなくちゃいけないなということを発見する場なんですよ。これは、子供自身がそのことを知らなくちゃいけないんですけどね。

 どういうことかと言うと、どこの学校でも入学試験では100点満点のうち60点から70点取れば合格圏内に入ります。全部できる必要はないのです。そこで合格圏内に入るためには、各教科であと何点ずつ必要なのか。お子さんの点数との差を見て、この問題はできなくちゃいけないけど、ここはできなくていいやと捨てちゃう問題を見分けるのです。

 近ごろの入試試験というのは昔と違って、ものすごく洗練されていて、難しくなっていますから。特に、上位校こそ「捨て問」が必ずあるんですね。

捨て問というのは?

西村:手を付けちゃいけない問題です。難しくて時間ばかり食ってしまう。そういうのがあるということを知らなくちゃいけないし、そのことを意識して合否判定テストは作られているんですね。正答率は1%とか2%の難問で、言わばトラップみたいなものですね。ぱっと見は簡単そうに書かれているけれど、よほど実力がないと、どつぼにはまります。