NMNを経口投与すると短時間でNADに変換される

純粋にNADが効いたかどうかを確認するためですね。

今井:マウスが水を飲んだ後、わずか2分半で血中にNMNが出てくることが分かりました。2分半でNMNの血中濃度が上昇し、5~10分で最高値に達して15分経つと血中から消えてしまう。

 同時に、肝臓の中のNAD合成量を見ると、NMNが血中から消えるのに呼応して肝臓内のNAD合成量が増える。これが何を意味しているかというと、経口投与するとNMNは素早く腸内で吸収され、15分ほどで組織に移行してNADに変換される、ということです。

 私たちは1年間、100mg/kg/日と300mg/kg/日の2つの用量を普通の健康なマウスに飲ませ続けました。マウスも人間と同様に老化すると体重が増えるのですが、特に、オスの場合は脂肪が増えます。ところが、NMNを溶かした水を飲んでいたグループは老化に伴う体重増加が少なかった。普通の水を飲んでいたマウスと比べると、100mg/kg/日で4%、300mg/kg/日で9%の体重減少が見られました。70kgの男性だと、100mg/日で3kg弱、300mg/日で6kg以上やせるという計算になります。

結構な体重減少ですが、マウスが体調を壊しただけでは?

今井:調べました。血液の生化学検査や尿検査、病理検査など様々なことをしましたが、副作用や毒性などは全く認められなかった。それどころか、逆に面白いことが分かりました。

 マウスも人間と同じで年を取ると食が細くなります。ところが、NMNを投与しているグループは体重あたりの食事の量が増えていた。要するに、NMNを飲ませているマウスはより食べているにもかかわらずやせている。副作用や毒性を示すデータも何もない。

NMNでマウスは若返っていた

代謝が増えているということですか。

今井:その通り。エネルギー代謝についても調べていて、NMNマウスは酸素消費量が増えていました。しかも、脂肪酸を燃やしているのか、血糖を燃やしているのかをさらに調べたところ、脂肪酸を燃やしてエネルギーを得ているらしいということが分かりました。

NMNをサプリにして売ればバカ売れしますね。

今井:もう少し聞いてください。マウスも年を取ると代謝が落ちますが、11カ月齢のマウスと17カ月齢マウスの酸素消費量を比較すると、NMNを投与した17カ月齢のマウスは11カ月齢のマウスと比べて酸素消費量があまり変わらない。つまり、NMNを投与しているグループは6カ月若い状態になっていました。

 さらに、夜間の活動量を調べると、100mg/kg/日の方が300mg/kg/日よりも増えていた。必ずしも、多く飲ませればいいわけではないということです。他にもインスリンの効き目――インスリン感受性といいますが――や遺伝子レベルの実験など様々なことを調べたところ、NMNによって体の代謝状態、特に骨格筋でエネルギーを産み出す能力が高まるということが分かりました。しかも、若いマウスに投与してもほとんど効果がない。