早川:人間の背骨は24個の椎骨でできていて、中央には脊髄という神経の束、その横には自律神経が通っています。椎骨からは、特定の臓器や筋肉につながる神経が出ています。そのため、特定の椎骨が硬直すると、そこから神経が通っている臓器や筋肉も弱っていくのです。この因果関係は逆でも成立していて、特定の臓器や筋肉の働きが鈍ると、該当する椎骨が硬直してきます。井本整体ではそのような連動性を読み解きながら、たとえば呼吸器の負担が原因で2次的に心臓の問題を抱えているならば、胸椎3番を緩める体操をすることで、心臓の負担を取り除く、といったアプローチを取ります。こちらが背骨と関連臓器・筋肉の関連図です。

ええと、胸椎の3番は…ありました。これが心臓と…。じゃ例えば、腎臓に関連するのは…。

早川:腎臓に影響を及ぼしている椎骨の一つは腰椎の5番です。ここを刺激することで排尿に関係する障害を改善し、膀胱の負担を軽くし、その連動性を使って腎臓から泌尿器、膀胱、前立腺にかけての流れをよくする事ができるのです。こうした連動性の活用こそ、井本整体の「人体力学体操」の醍醐味の1つです。

でも、ですよ。胸椎や腰椎を刺激しようと「意識」して体操するわけですから、結局、先ほどお話された「意識的な運動・働きかけ」になってしまいませんか。

これが秘儀・井本整体流「意識の外からの働きかけ」

早川:実際にやってみましょう。(聞き手を指導しながら)腎臓を強くする腰椎5番の体操はこうします。ここが腰椎5番です。足をこうして、腰を少し浮かせる。ゆっくりです。そして少しずつ、小さく動かす。小さく、小さくです。

ううう。結構、効く…。

早川:どうです。腰椎5番に力が集まるのを感じられますか。

はい。たぶん。腰椎5番に力が集まっていると思われます。ううう。

早川:腎臓はどうですか。

腎臓? 知りません…。自分はただ腰椎5番に力を集めているだけで…。「人体の連動性」とやらで、腰椎5番から腎臓に何らかの働きかけはあるのかもしれませんけど、それは私のあずかり知らぬところで、その先は「腰椎5番に聞いてくれ」としか…あっ、無意識だ!

早川:これが井本整体の人体力学体操です。意識的に直接、臓器への働きかけをするだけでなく、その臓器と連動する運動系、つまり骨格と筋肉に働きかけます。

それによって、「意識の外からの働きかけ」を可能にする、と。なるほど。

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