働き盛りのビジネスパーソンが激務で体を壊すケースが相変わらず頻発している。企業の中には「従業員の健康増進」を経営課題に掲げる動きもあるが、日本企業の社員が体調を崩す最大の要因の1つ「長時間労働」の根本的改善に乗り出す会社はまだまだ少ないのが実情。上意下達の無駄な会議や、1円も生まない無駄な資料作りを事実上強制・推奨し、社員を無意味に疲弊させ続けている企業が依然として幅を利かせているのが現実だ。
こうなると社員は自らの健康と命は自ら守るしかないわけだが、ここに、「『健康でなければならない』と思い、様々な工夫をすること自体が、逆にストレスとして体に悪影響を及ぼしかねない」と主張する専門家がいる。一体どういうことなのか。話を聞いてきた。
(聞き手は鈴木信行)

井本整体(www.imoto-seitai.com)認定指導者。千葉支部長。柔道整復師として臨床経験を重ねる中、平成4年、井本邦昭氏と出会い、整体の真髄に触れ、深い感銘を受ける。以来、井本整体の技術の習得と普及に情熱を傾ける。平成6年千葉県松戸市に整体指導室を開設。東京本部講師、朝日カルチャー新宿講師。人体力学・井本整体では、東京、大阪、札幌、福岡にて、各種定期講座や集中講座、体操レッスンを開いている。
「健康になろう」と思うこと自体が既にストレスだとすれば、私たちはもはや、健康維持のために何をどうすればいいのか分からなくなってしまいますが、本当なのでしょうか。
早川:ある時、疲労を訴えて井本整体の操法(施術)を受けられた方がいらっしゃいました。その方は操法を受け、見事に元気を取り戻しましたが、その後「せっかくここまで体調が戻ったんだから、もっと健康になろう」と、スポーツジムに通い始め、食事にもとことん気を使うようになりました。すると、体調が逆に悪化してしまったのです。
そんな馬鹿な…。
早川:いくつかの理由が考えられます。1つは、自己流の誤ったトレーニングをされた可能性です。筋肉は過剰に鍛えると硬直を起こしてしまう性質があるため、体調がかえって悪化することがあります。また、仕事が終わって疲れているのに無理にジムに行き、体を酷使し、睡眠時間を削り、しかも食事の時間が夜遅くなるなどの条件が重なると、今度はその疲労のために眠れなくなったり、朝の目覚めが悪くなったりする。当然、体調は悪くなります。筋肉にとって一番大切なのは、硬くする事ではなく、弛んで弾力がある事なのです。
「健康になろう」と張り切りすぎてオーバートレーニングになってしまった、と。これはよく聞く話です。
正しい心掛けも強過ぎるとストレスになる
早川:もう一つ考えられるのが、心理面での影響です。人間の体はとてもデリケートで、ちょっとしたことでストレスが発生します。ひとたびストレスが発生すると、様々な臓器や筋肉に影響が出ます。胃などはその典型ですね。食べすぎなどでも壊れますが、ストレスにも弱い。ストレスにより自律神経が乱れ、胃酸過多になり、胃潰瘍になったりします。そして、ここからが重要なのですが、「健康になろう」と過剰に留意することも、ストレスになる場合があるのです。「ジムにきちんと通わなければいけない」「三度三度きちんと食べなければいけない」「栄養バランスを取らなければいけない」「サプリメントを採らなければいけない」。そんな一見正しい心掛けも、強過ぎるとストレスになります。
やっぱりそうなんですか。人間って本当に弱い生き物なんですね…。
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