鈴木:3つ目は、チームのメンバーに成長する喜びを与えられる人です。先ほど申し上げた通り、プロセス価値は部下の仕事ぶりを見つめることから始まります。自分は上司に見守られていると実感できれば、その部下はこの職場にいて良かったなと思うでしょう。そうなると不思議なもので、お風呂に入っている時にでも素晴らしいアイディアが浮かんできたりする。なぜなら自分の頑張りが職場に貢献していると実感できるからです。そういう自発的な良い循環が回り始めれば、必ずその人は成長する喜びを実感するはずです。

 もちろん最初からこの3つの条件を兼ね揃えている人はいません。リーダーの心構えとして、若いころからそうやって思っていけば良いと言うことです。

 鈴木さんがリーダーの条件を考えたきっかけがあるのですか。

鈴木:キユーピーで管理職になった頃から、おぼろげながら「軸」という考え方は持っていました。ただ、この山城経営研究所のフォーラムで鍛えられたことで、より明確に意識付けができて、その後の社長時代でも自分の背骨になるような考え方を学ぶことができました。

 実は、会社から「山城経営研究所のフォーラムに行け」と言われたときは面食らいました。山城研の存在は知っていましたが、当時の私は52歳。経営企画本部長として、忙しい日々を過ごしていました。「なんで自分が行かなければならないのか」と思ったのが当時の正直な気持ちです。

「日本のドラッカー」とも称された山城章氏に学んだ

鈴木氏の背景に映っているのが一橋大学の元名誉教授、山城章氏(1908~1993)。日本における経営学の泰斗として、世界に通用する「日本経営学」の確立に情熱を注いだ。1972年に山城経営研究所を設立。著作に「経営政策」「経営学原理」などがある

 山城研で学んだことで印象的なことは何ですか。

鈴木:山城先生は「経営というのは道なんだ」ということを説かれています。柔道や剣道と同じように、自己啓発の道なんですよ。いつまでたっても尽きることがない。経営者というのはそうやって自分を磨いていかなければならないというのが経営道という言い方なんです。

 よい経営者はよい会社を作る。よい会社がよい社会を作る。だからこそ我々も、よい経営者を生み出すお手伝いをしているところなんです。

 山城先生から直接、指導してもらったことがあるのですか。

鈴木:残念ながら、直接お目にかかる機会はありませんでした。私は32期の修了生なのですが、異業種の同期の仲間と「企業とは何か」「何のための経営なのか」など、会社ではできなかった青臭い議論を重ねました。

 山城先生のすごいところは、1960年当時から、いわゆる利益至上の強欲資本主義を批判していたことです。1960年代と言えば、日本は高度成長期まっただ中でした。その頃から利益ばかりを追いかけていては、人が干からびてしまうと警鐘を鳴らされていました。日本のドラッカーと言われていたぐらいの人ですから。

 日本にも、ドラッカーに匹敵する方がいらっしゃったんですね。

鈴木:経営の主体は人であるから、経営の行動というのは、それを構成する人間の行為です。だからこそ人の心を大事にした経営をすることが経営道に沿った考え方だと、山城先生は説かれています。

 人の心を大事にすると言っても、単に甘やかすことではありません。伝統的な日本の経営の特性を明らかにし、日本の経営の良さを世界標準のマネジメントの方向性に沿って改善していかなければなりません。それが今、山城経営研究所が取り組んでいることです。