社員のやりたいことはそれぞれなので、会社の目指すべき方向性に向かわせるのは難しいのではないでしょうか。

鈴木:そのきっかけとなるのが、最初に申し上げた通り、日々の部下の行動を直属の上司がよく見てやることなのです。

 プロセス価値は「見つめる」「見守る」ことから生まれます。部下がどんなことを成し遂げたいと思っているか、逆にどんなことに悩んでいるか。上司であるあなたは部下の毎日のプロセスを見つめ、言葉を交わしながら、会社やチームが目指している目標に合致するように少しずつ部下を導いていくのです。あくまでも起点となるのは部下の行動を見つめる行為を継続することです。

鈴木:毎日見つめることで、部下の気持ちも変わってきますよ。部下だって自分の上司が目をかけてくれていると思えば、その人のために頑張ろうという気持ちになるでしょう。

 逆に言えば、「オレは忙しいから結果だけを報告しろ」という上司に、部下は良い報告しか上げなくなるんじゃないですか。仕事がうまくいっているうちはそれでも良いかもしれませんが、何か問題を抱えている時は後で取り返しがつかなくなることだってあり得ます。でも、それは一義的に部下が悪いわけではない。その予兆を汲み取れなかった管理職であるあなたにも、責任があります。

 なんとなく耳がいたい話ですが…会社軸と社会軸を合わせるということはどういうことですか。

鈴木:それはやはり、会社の目指すべき方向が社会のためになるということです。社員からすれば、自分たちが提供している製品やサービスを通じて社会が良くなることが実感できれば、それこそ理想の形と言えるでしょう。

 例えば、売り上げが1000億円の会社が1200億円を目指すとします。社員一人ひとりのやりたいことを(自分軸)を上司が上手に束ねて目標(会社軸)を達成できた。それで社員の給料は増えて皆がハッピーになれたかと言えば、そう単純ではない。なぜなら、1200億円の売り上げ目標を達成すれば次は1500億円、その次は2000億円と、いつまでたっても成長を追い求めることになるからです。

 売り上げや利益だけを追い求める企業には何か満たされない、空しさが残ります。やはり自分たちの会社は製品やサービスを通じて、社会に役に立っているという実感がないと社員の頑張りも続かないはずです。

リーダーは全体感をもって我慢することを訓練する

 リーダーに求められる資質とは何だとお考えですか。

鈴木:私はリーダーには3つの条件が必要だと考えています。

 1つは明確なビジョンを持つ人。自分たちの会社は何をするために存在しているか。その明確なビジョンを描けている人です。

 2つ目は、全体感を持っている人。例えば自分の部署だけ良ければ、他は知らないという人はリーダーには不向きだなと思いますね。例えば、会社にとって重要な案件がある場合、それを尊重できなければなりません。たとえ自分の部署の投資額が減ったとしても、そこは一旦引き下がる。

 それはなかなかできないですよね。

鈴木:難しいですよ。自分の部さえ良ければいいという考えから一歩乗り越えて、もっと高い位置から会社全体を見渡さなければなりません。うちの会社は今ここを伸ばすべきだから、自分の部署は割を食ってもしょうがないということを受け入れることができるかどうか。全体感をもって我慢することを訓練しなければなりません。