「こいつ(部下)はなぜ、思い通りに働いてくれないのか…」
組織を率いるリーダーであれば、このような苛立ちを感じたことがあるだろう。社長に限らず、部長や課長、もしくは数人のチームを率いるリーダーであっても、自分の部下が思い通りに動いてくれないフラストレーションを日々、感じているはずだ。
「2対6対2の法則」。会社の中で優秀な人は上位2割で、6割が普通の人、そして残りの2割がダメなヤツ。巷ではこんな話もまことしやかに語られるが、下位の2割を切り捨てたところで何も問題は解決しない。むしろ管理職として、あなたの資質が問われるだけだ。
部下を評価するには結果ではなく仕事のプロセスをきちんと見守る──。こうした信条を掲げて次世代の経営者の指導をしている人がいる。キユーピーの社長を7年間務めた鈴木豊氏だ。今はミドルマネジメント層を対象に「経営道」を説く山城経営研究所の社長を務める。
部下の育成で日々悩んでいる全国のリーダーに向けた、鈴木氏のメッセージをお届けする。
(聞き手は坂田 亮太郎)
経営者は「結果」で評価される立場にあります。決算を締めてみて「頑張ったけれど売り上げは落ちてしまいました」では、経営者として失格と言われてしまいます。常に「結果」を求められる経営者ですが、部下を評価する上では「結果」よりも「プロセス」をよく見なければならないと、鈴木さんは説かれています。それはなぜですか。
鈴木:私はキユーピーで管理職をしていた頃から、部下の評価ではプロセスをきちんと見る、ということを心がけてきました。理由は簡単です。それは「結果がプロセスを規定してしまう」ことがよくあるからです。

1949年12月東京生まれ、66歳。73年立教大学経済学部経営学科卒業、キユーピー入社。2001年に取締役大阪支店長、その後常務取締役経営企画室管掌などを経て2004年に社長に就任。2011年に同社相談役に退き、2013年から顧問。2014年から山城経営研究所の社長に就任し、翌年キユーピーの顧問を退任した(写真:北山 宏一、以下同)
鈴木:どういうことか具体的に説明しましょう。営業マンが2人いるとします。Aは今期、非常に良い営業成績を上げましたが、Bは前期割れとなりました。数値だけを見ればAの評価を上げて、Bの評価を下げるのが妥当でしょう。
しかし、Aは得意先がたまたま好調であったため、たいした努力もせずに売り上げを伸ばせたとしたら、結果だけで評価してしまって良いのでしょうか。一方のBは日々の仕事(プロセス)の中でさまざまな努力をしたにもかかわらず、数字に結びつくような結果は今期、得られなかった。これが実情だとしたら、結果だけで評価するのはフェアではありません。
結果さえ良ければプロセスは問われず、高い評価を受けたAは「仕事とはこんなものか」とますますプロセスに対する努力が緩慢になってしまうでしょう。逆に、どんなに努力しても結果を伴わなかったBは、「お前の仕事のやり方が悪い」と叱責されてしまうかもしれません。これでは、人は育ちません。しかもAもBも両方とも伸びなくなってしまいます。
たとえ結果が出せなくても、プロセスを正当に評価して「お前はよくやった」と認めてやれば、Bは「もっと頑張ろう」と奮起して、次はきっと良い結果につながるはずです。Aだって、プロセスを見直せばもっと成績を伸ばせたかもしれません。だからこそ「プロセス価値」で人を評価しようと言ってきました。
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