話を戻すと、新浪さんのように発信力を持つという観点では、日本企業の経営者には課題も多いですね。

新浪:まず大前提として、当然のことながら業績は上げていかなければいけないですね。グローバルで展開する上で為替は非常に重要ですが、短期的に為替に合わせて対処するのではなく、常に「Who are we」、我々は何者で、何のために存在するかを考えていく。日本の企業らしさを強く意識しつつ、しかし数字はちゃんを出していくということですね。自己資本利益率(ROE)を長期的に上げるという目標を掲げることなどもそうです。

 その上で、発信力という点では、本来すごくいいリーダーは日本にもたくさんいるのですが、対外的にものを言うというよりも、いわゆる自分の「本業」に専念してしっかりやろうという方が非常に多い。対外的な時間を割いていないということですね。私自身は、実はそうした対外的に時間を割くことが自社にとっても大きなプラスになると考えています。

人間関係の弱さに危機感

確かに、「本業に集中したいから対外的な活動はしない」と公言される経営者は多いですよね。

新浪:問題は時間の割き方だと思います。ダボス会議をはじめとして、自分の考え方や意見を発信できる場は非常に多いですし、日本の経営者はそうした場に呼ばれたらもっと積極的に参加した方がいいですね。参加することで間違いなく人的ネットワークが広がりますし、本業に繋がる部分も必ず出てきます。私の前にCEDで受賞された小林陽太郎さんも、ネットワークがもの凄かったですよね。

 その意味で私が今危機感を持っているのは、日米の人間関係、これは経済も政治もそうですが、非常に弱くなっているのではないかなということです。これは小林陽太郎さんの時代と比べると凄く弱いですよね。私は2国間、多国間、海外とのネットワークはまさに本業だと考えていて、例えば我々サントリーで言えば米国にこれだけのコミットをしているわけで、米国の大統領選挙だとか環太平洋経済連携協定(TPP)の行方は非常に意味があるわけですね。だとすれば、米国のビジネスパーソンのネットワークの中で、彼らが何を考えているのかを知ることはとても大きな意義があるのです。

まさに、一次情報として直接意見を聞くことが重要であると。

新浪:そうです。TPPにしても、米国に行って話を聞くと、実は新聞報道とは違った情報が出てくる、または印象が違うことはあるんですね。そうすれば情報の分析の仕方も変わってくるし、対応の仕方も変わってくる。そこで大切なのは、日米の人間関係をつくっていなければダメだということです。中国との関係も同様です。今回、受賞して小林陽太郎さんという大変尊敬する方の後にいただくなんておこがましいですが、でも考えさせられたのは日米の人的ネットワークの再構築が必要だということですね。