国際会議の場では、やはりローソンでの実績などを話される機会も多いのですか。

新浪:いえ、個別の企業の取り組みなどについて話すというよりは、企業のあり方としてどのようなものが求められるかという観点で話をすることが多いですね。ただ、日本企業の素晴らしい具体例として、例えばサントリーでいえばファミリーオーナーシップを持つ企業の好例として触れることなどはあります。企業の形態が色々ある中で、企業が持っている文化をどのように作り上げていくか、そうした企業文化の議論を相当したりしますからね。

 例えば自動車産業でも、トヨタ自動車やホンダはしっかりとした企業文化があって、世界的なブランドがあって信用がある。一方で、危機に陥った時のゼネラルモーターズ(GM)は短期利益を追求した結果、企業文化を忘れてしまった。「Who are we」ということを忘れてしまったのではないかと。会議ではこうした議論を喧々諤々やる中で、たくさんのリポートが出てきたりするんです。サントリーも含め、こうした日本企業のあり方を発信してきたというところが、今回の受賞に繋がったのかなという気はしています。

経営学は手法ではなく企業文化

そうした意味では、米国の産業界の考え方も変わってきているのでしょうか。

新浪:企業文化が社員一人ひとりの行動にどう宿っているのか、つまりヒューマンリソース(HR)をどうやって育て上げていくのかが非常に重要だと気付き始めているとは感じます。私は「ライスパディーカルチャー」と呼んでいるのですが、ライスパディーとは要は「田植え」ですね。チームで田んぼを耕して育てていく、つまりチームで一緒になって物事を解決していく、さらに言えば、自然を克服するのではなく、自然と共に歩んでいくということですね。

 自然の変化に合わせて、自分達がどのように生きていくかという生活の知恵を共同体として持っている日本。その考え方は企業にも息づいていると思います。だから、共同体を構成している構成員は企業で言えば社員ですが、その社員一人ひとりがどのような価値観、つまり企業文化を持って、その行動に反映させていくかとうことは非常に重要です。経営学というのはだから、経営手法ではなく、むしろ企業の歴史であり文化なんだという話を米国の経営者の人たちとはよくしています。

(写真:的野 弘路)

新浪さんの考え方は、最初はかなり驚かれたのではないですか。

新浪:ええ、彼らはそういうところから発想しないですからね。何を言っているんだと(笑)。ですが、長い目で見たときに、社会に生かされている、社会に評価してもらうことの重要性に気づき始めた。逆に言えば、社会に評価されない会社はダメだと。これはリーマン・ショックを経て、米国の人々もつくづく理解したと思います。短期的な利益だけ、自分達だけが利益を得ればいいという人たちと、それでは企業、社会がおかしくなると考える人たち。この2つに大きく分かれていって、結果的に良識を持っている人たちは個々の利益だけを追求してはダメだと気付いたと思うんですね。

 その意味では、今回の受賞は私個人がもらったというよりも、日本の企業の良さ、日本の企業のあり方が評価されたということだと捉えています。私はたまたまそうした考え方を発信できる場を持てたので、そういう話をした時に、「日本って面白いよね」と感じてくれた人たちがいたということでしょう。