(前回から読む)
前回、がん治療は病院間の連携を促す仕組みが必要だと伺いました。
鈴木:がんというのは、年齢が上がるほど発症する確率が高くなる病気です。高齢化が進む日本で、がん患者が増えるのは必然とも言えます。

順天堂大学医学部呼吸器外科学講座主任教授。東京都出身。1990 年防衛医科大学校卒業。95 年国立がんセンター東病院(現:国立がん研究センター東病院)レジデント。99 年国立がんセンター中央病院(現:国立がん研究センター中央病院)呼吸器外科医員、2007 年同病院呼吸器外科医長に就任。08 年から順天堂大学に移り現職。専門は「早期肺がんの診断と治療」「進行肺がんに対する集学的治療」など(写真:鈴木 愛子、以下同)
高齢になると当然、他の疾患に罹患している確率も高くなります。糖尿病や脳梗塞の既往もあれば、心筋梗塞を患っている患者さんもいます。そうなると合併症を注意しなければなりませんが、そのようなリスクを持つがん患者の方にはがんに特化したセンター病院に行かれることはおすすめできません。
がんセンターは“元気な”がん患者向き
がんと診断されたら、がんの専門病院にお世話になりたいと思いがちですが……
鈴木:一般の方々がそのような考えをお持ちなのは無理からぬことです。ただ、病院にはそれぞれ役割があります。
いわゆるがんセンターというのは、治験(新しい医薬品や医療機器の承認を得るために行われる臨床試験)を実施することが重要な役割となっています。治験を成功させるためには患者さんをセレクトしなければなりません。新薬が本当に効くかどうかをテストするので、合併症リスクが高い患者さんは対象から外されます。
変な言い方に聞こえるかもしれませんが、“元気な”がん患者を相手にするのが、がんセンターの本来の役割なのです。つまり、心筋梗塞を患っていたり透析をしていたりする患者さんには向いていないのです。
実際、がんセンターの将来向かう先はそうなっています。がんセンターというのは、通常の病院ではできないような臨床試験や治験をやるところだと。
誤解を招かないように申し上げますが、がんの治療にかけては、がんセンターは非常にレベルが高い。私もがんセンターに10年以上勤務していたのでよく分かっています。だからこそこれから大事になっていくのは、大学病院を中心とした総合病院が、がん治療のレベルを上げていかなければならない、ということです。
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