
企業をはじめ、社会のさまざまな場面でLGBT(レズビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランスジェンダーの頭文字で性的マイノリティの総称)への対応が求められている。「LGBTは生産性がない」という国会議員の文章を載せた雑誌が、さらにその説を擁護する文章を載せ休刊に追い込まれる事態も起きた。今もLGBTに対し根強い偏見があるのは事実だ。一方で、自分は異性愛者であり、周囲にLGBTの人もいないため、関係ない問題と思い込んでいる人も多いのではないだろうか。だが、LGBTに該当する人の割合は全体の7.6%に上るとする調査結果もあり、自分の周囲にLGBTがいなくても、本人が表明していないだけという可能性もある。
改めてLGBTをとりまく課題にどう向き合うべきか、企業向けの勉強会を数多く手がけ、私生活では勝間和代氏とのパートナーシップを公表する増原裕子氏に聞いた。 (写真=北山宏一、聞き手は日経ビジネス副編集長 村上富美)
LGBTアクティビスト/コンサルタント
株式会社トロワ・クルール代表取締役

2011年よりレズビアンであることをオープンにして社会に対して積極的に発信をしている。
2015年渋谷区パートナーシップ証明書交付第1号(2017年末にパートナーシップ解消)。
慶應義塾大学文学部卒業後、同大学大学院修士課程修了。ジュネーブ公館、会計事務所、IT会社勤務を経て起業。ダイバーシティ経営におけるLGBT施策の推進支援を手がける。経営層、管理職、人事担当者、営業職、労働組合員等を対象としたLGBT研修・講演の実績多数。著書に『ダイバーシティ経営とLGBT対応』『同性婚のリアル』等5冊がある。
数年前からLGBTという言葉が頻繁に使われるようになり、ここにきて政治家などのLGBTに対する差別的な発言や、配慮を欠くマスコミに批判が集まるなど、LGBTが注目されています。日本の企業、職場においてLGBTへの対応は、現在、どのような状況にあると言えますか?
増原裕子氏:企業においては、13人に1人といわれるLGBTへの対応をひとつのビジネスチャンスと捉える側面があります。企業や業種によっても違うのですが、金融業界や通信業界などはLGBTに関する取り組みが早かったと言えます。
例えば、銀行が同性カップルに向けたペアローンを用意したり、保険会社が同性パートナーに保険金の受け取りを認めたりするなど、男女の夫婦向けと同じサービスを提供する動きが見られました。また携帯電話会社の家族割や航空会社のマイレージなどについても、同性カップルが男女の夫婦と同じように分け合えるようにするなどの対応もありました。
並行して、職場環境の課題として、LGBTの社員にどう対応するか、考える企業が増えていると思います。また外資系企業には、本国がLGBTに早くから対応しているため、日本法人でも取り組むところも多いです。
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