このうち扁平上皮がんは喫煙が発症の原因とされています。タバコの煙が肺に入ってきて、気管支が3つに分かれる辺りに扁平上皮がんができます。腫瘍ができると喀血(かっけつ=咳の中に血が混じる)するので、割と早く分かります。昔は扁平上皮がんにかかる人は多かったけれど、喫煙率が下がってきたので、最近では扁平上皮がんにかかる人は減ってきています。

 一方、増え続けているのが腺がんという、肺の末梢にできるがんです。肺というのは感覚神経を持たないので、がん組織が大きくなっても痛みはありません。扁平上皮がんと違って喀血もしない。だから自覚症状もない。おまけに「タバコを吸っていなければ自分は肺がんにならない」という頭があるでしょう?

健診の胸部X線写真は「ほとんど意味なし」

はい。今日、先生に会うまでずっとそう思ってきました。

鈴木:だから発見が遅くなり、死亡率が高いのも肺がんの特徴です。だいたい死亡率は80%~85%といわれています。

 では、どうやって見つけるか。健康診断などで、胸部のレントゲン写真を撮りますよね。それで大丈夫だと言われれば安心しちゃう。でも、実はそれが一番、危ないわけです。

 公益財団法人「東京都予防医学協会」が運営している「東京から肺がんをなくす会(ALCA)」という組織があります。その健診は年に2回、CT(低線量ヘリカルスキャンマルチスライスCT)、喀痰細胞診(痰の中にがん細胞が混じっていないかを確認する検査)、胸部X線撮影の3つをやります。これまでに、数十万人を検診してきた実績があります。

 ALCAの面白いところは、世界でも唯一、スモーカーでも入会できることです。通常、喫煙者はスクリーニングから除外されてしまいます。だから非常に実験的な取り組みと言えます。

 これまでの調査の結果、胸部CTだけで見つかった肺がんがあります。喀痰細胞診だけで見つかった肺がんもあります。しかし、胸部レントゲンだけで見つかった肺がんというのは「ゼロ」なんです。

 どういうことかと言うと、レントゲン写真で写っているがんというのはCTでも分かるし、痰でもがん細胞が検出される。だから胸部レントゲン写真は要らない、とと言えます。

会社などでは年に1度の健康診断で、X線で胸部写真を撮りますが、あまり意味がないということですか。

鈴木:肺がんを発見するという目的なら、そうとも言えます。効果的なのは胸部のCTを撮ることです。ノンスモーカーだったら、5年に一遍でいい。20歳でも肺がんになる人がいるので、成人したら5年に1回のペースで定期的に胸部のCTを撮ってもらいたいですね。

 一方、スモーカーは半年に一遍でも助からない人は助からない。喫煙していると、悪性度の高いがんが発生する可能性が高くなるからです。特に女性には極力、タバコを吸わないでもらいたい。通常、男の人の方が女性よりも予後(手術後の回復度合い)が悪い。つまり、治りにくいと言われています。ただ、タバコを吸う人同士で比べると、女性の方が予後は悪いです。