10年後は今よりももっと世の中がバーチャルになっている
イノベーションは偶然から生まれる。
ドミニク:その通りです。イノベーションのもう一つの秘訣は多様性のあるアプローチで進めることです。だからこそ、ここで働く人たちがみんな同じでないことが重要になる。デザイナーがすべて白人で同じような経歴というのではなく、男性や女性、異なる宗教、異なる年齢など多様な人々が持つ考え方のよいところを組み合わせる必要があります。
Moment Factoryはプロジェクション・アートの地平を切り開いています。技術的にも様々な領域にまたがっていると思いますが、クリエイターはどういう専門を持っているのでしょうか。
ドミニク:Moment Factoryにはマルチメディア・ディレクターと呼んでいる専門家がいます。全社で20人くらいかな。コンテンツ、インタラクティブ、シノグラフィ(凸凹した背景に投射していく空間演出技術)の3つはMoment Factoryの技術的、創造的能力の核心部です。この3つの分野を深いレベルで理解している人間がマルチメディア・ディレクターです。
Moment Factoryは“We do it in Public”というコンセプトを掲げています。これはどういう意味でしょうか。
ドミニク:エンターテインメントの未来は人間の集団が集い、つながるところから生まれると考えています。それを言葉としてどう打ち出すかということを考えた時に、「パブリックでやる」というフレーズになりました。ある意味で大胆な言い回しですが、人々が公共の場で集まり、つながるようなモノを生み出していく、ということを意味しています。
デジタルではなく実空間でつながることが大事?
ドミニク:まさに。私が考えるR&Dのアプローチはフェイスブックやツイッター、インスタグラムのような人々をバーチャルな世界に導いている技術を乗っ取ることです。ほとんどのテクノロジーはバーチャルな世界に人々を引き込む傾向にありますが、われわれはテクノロジーを人と人をリアルにつなげる手段として用いる。Moment Factoryが生み出した空間で人間の集団が一緒になる。それがとても重要なことだと考えています。
誤解のないように言っておきますが、そういった技術と戦おうとは思っていません。それを利用し、ハイジャックしようという話です。ゲームや映画、SNSなどで使われている技術は積極的に利用しています。ただ、その技術は常に集団をリアルな世界でつなげるために利用します。10年後は今よりももっと世の中がバーチャルになっているでしょうから、われわれが提供しているようなライブエンターテインメントの価値を理解する人は増えると思います。
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