さきほどおっしゃっていましたように、山下社長の出身母体である新生銀行は17年までに自前ATMの運営を辞め、ATM機能はセブン銀行に委託する体制に切り替えました。

山下:自前のATMを持ち続ける(コストなどの)デメリットについては、ずっと議論していました。私はリテール事業のトップを務めていたので、セブン銀行さんとの交渉も担当していました。

 セブン銀行の初代社長である安斎隆さんにお会いして、「セブンのATMは赤色ですが、我々が支店に置くものは銀色にさせてもらえませんか」とお願いしたことがあります。安斎さんに「銀色なんかにしたらぜんぶ赤字になるよ」と言われ、ひやひやしたのを覚えています。

もともと新生銀行の自前のATMは銀色でしたよね。

山下:そうですね。最終的には銀色にさせてもらい、ちゃんと収益も出ました。けれど安斎さんに報告に行ったら「バカか、赤にしておけばその3倍はもうかったはずだぞ」と言われました(笑)。

そのときはローソン銀行の社長就任は決まっていなかったのですか。

山下:もちろん、当時は。

当時、セブン銀行をどのように評価されていましたか。

山下:もともと新生銀行と人材の交流もありましたし、提携関係にもありました。当初から私はずっとお付き合いがあって、非常によく考えて運営されているな、という印象を持っていました。

当面はATM事業が収益の柱になるとのこと。裏を返せば、将来的には非ATMを主力に育てるようなイメージなのでしょうか。

山下:お客の資産形成に資する金融商品の提供だとか、決済インフラだとか、そういったものがやはり収益の柱の一つにはなってくると思います。

いつの日かATM事業を上回ることもありえますか。

山下:ないとは言えないでしょうね。ただ、どれくらいの時間軸で実現するのかはわかりません。

少なくともATMだけを主力に据え続けるわけではない。

山下:おっしゃる通りです。

銀行免許の取得には意味がある

銀行免許を持たなくても、すでにフィンテック企業は様々な金融サービスを生み出しています。銀行免許を取得したことが、むしろ自由に幅広く事業展開するうえでの障害になりませんか。

山下:たしかに銀行法の枠内で営業しようとすると、非常に厳しい規制と向き合うことになります。ただ一方で、銀行免許を取るためにはリスク管理とか、コンプライアンスとか、様々な高い要件を満たす必要があります。アマゾンがいますぐ銀行免許を取れるかというと、そうはいかないはずです。お客と信頼関係を築くうえでも、銀行免許を持っていることは大きな意味を持ちます。

 また、銀行免許を持っていることで、銀行業界のネットワークに入ることができる、というメリットもあります。

例えばどんなものですか。

山下:なによりまず、(日本国内で銀行間の資金決済に使われている)全銀システムというのは、銀行じゃないと直接アクセスできないですよね。

 それから、やはり金融機関と提携しながら事業を拡大していくうえでは、お互い銀行同士だからこそ融通しあえるリソースとか、銀行同士だからこそ共同でできる事業があるはずです。地銀やメガバンクをローソン銀行として支援していくうえでは、やはり銀行免許はアドバンテージになります。