銀行視点より、お客視点でサービスを開発していくと。

山下:そこはやはり、小売業のやる銀行ですから。私は三十数年、銀行員としてキャリアを積んでからローソンに移ってきたわけですが、大きなカルチャーショックを受けました。こちらに来てから最初の1週間、加盟店のオーナー候補生と一緒に研修を受けたのですが、やはりモノの見方が銀行とは全然違う。

 自分としては、金融の世界にいるときから自分は腰も低く、目線も低いと思っていました。が、そうではなかった。小売業ではモノを買ってもらうためにどうすればいいのか、常に自分で考え続けなければならないんです。

具体的には、どんなことを感じましたか。

山下:お店の掃除ひとつとっても全然違いますよ。銀行員って基本的には銀行員として決められた仕事以外はやらないでしょう。ところが小売業では、お客にお店まで来ていただき、物を買ってもらうために何をすればいいのか、ルールなんて存在しないなかで懸命に知恵を絞るんです。とにかくモノを考える尺度が銀行とはまったく違う。これには私も反省させられました。

「我々は銀行」を言い訳にしない

どうしてそのような違いが生まれるのでしょうか。

山下:銀行員は「我々は銀行だから、こういうことはしない」と言い訳して、自分で限界を作ってしまうんです。ローソン銀行にも銀行出身の社員がいますが、お客様ファーストを徹底します。「銀行的な銀行」にならないようにします。

 マイクロソフト創業者のビル・ゲイツ氏の言葉で「銀行の提供するサービスは世の中に欠かせないが、銀行そのものは必要ない(Banking is necessary, but banks are not)」というのがありますよね。まさにその通りで、我々はいわゆる「銀行」になるのではなく、お客が必要とする本当の金融サービスを提供する会社になりたい。最初は苦労すると思いますが、避けては通れない道です。

小売業が運営するお客視点の銀行として、どんなことを実行しますか。

山下:まずは建値をこちらが一方的に決めるような姿勢は封印します。お客が使いたくなる、お客から評価されるサービスはどんなものかを考え抜きます。

具体的には。

山下:たとえば(フィンテック企業などが提供している)「お釣り貯金」というのは、旧来型の金融機関にはなかったアイデアです。我々も二番煎じ、三番煎じになったとしても、資産形成を進めたい世代に対してどんなサポートができるのかを検討していきます。

 といっても、あまり難しいものである必要はありません。日常の生活の中で、例えばコンビニで買い物していたら3000円余ったから、じゃあ、3000円で投資信託が買える……とか。そんな商品を想定しています。