日経ビジネスが特集「LGBT あなたの会社も無視できない」を掲載したのは2015年8月24日号。それから1年余りが経過し、同性パートナーの権利を認める自治体やLGBTに配慮する日本企業が増えるなど、LGBTの権利についての意識は大きく変わった。LGBT当事者の就職活動にどのような変化があり、どのような課題が残るのか。LGBTの学生などの就労支援を手がけるReBitの藥師代表に聞いた。

(聞き手は 熊野信一郎)

藥師実芳(やくし・みか)/特定非営利活動法人ReBit代表理事
2013年、早稲田大学商学部卒。行政/学校/企業等でLGBTに関する研修を多数実施。キャリアカウンセラーとして約500人のLGBTの就労支援を行う。新宿区自殺総合対策若者支援対策専門部会委員、世田谷区第二次男女共同参画プラン検討委員に就任。2015年、青少年版国民栄誉賞と言われる「人間力大賞」を受賞。世界経済フォーラム(ダボス会議)が選ぶ世界の20代30代の若手リーダー、グローバル・シェーパーズ・コミュニティ(GSC)選出。著書に「LGBTってなんだろう?? からだの性・こころの性・好きになる性」(合同出版)。

昨年11月に東京・渋谷区が同性パートナーに対して「パートナーシップ証明書」の交付を始めるなど、この1年ぐらいでLGBTに対する社会の意識が変わりました。LGBTの就労支援を通じて、どのように受け止めていますか。

藥師:就労支援を始めて3年になりますが、確かに社会の変化は感じています。以前は、「うちの会社にLGBTの社員はいない」と言われることもあり、LGBTが職場における課題として認識をされていませんでした。しかし、メディアでの報道もあり、約13人に1人はLGBT、大学新卒の就活生であれば年約3万人いるということが意識されるようになったことは大きな変化だと考えます。

 就活における企業の取り組みは増えています。例えば金融業界の企業約15社によるLGBTファイナンスさんや、日本アイ・ビー・エムさん、ヤフーさんをはじめとしたIT企業連合による、LGBT学生向けの業界説明会が行われています。また、KDDIさんがエントリーシートの性別欄をなくすなど、LGBTに配慮する企業が増えてきてきました。

具体的にはどのような取り組みでしょうか?

藥師:例えばLGBTの働きやすさ構築のため、性的指向や性自認などLGBTであることで差別してはいけない旨をダイバーシティポリシーや社内規定に記載する企業や、NEC さんのようにグループ内の人事部門や人権相談窓口にLGBTの研修を取り入れる企業が増えてきました。また、野村証券さん、アクセンチュアさんのように社内でのLGBTとアライ(理解者)のネットワークを有し、社内外での発信に取り組まれる企業もあります。

 また、社外への発信として、GAPジャパンさん、ユニリーバ・ジャパン・ホールディングスさんなど、LGBT関連イベントのスポンサーになる企業も増えてきています。LGBTのお客様への対応として、日本航空(JAL)さんや全日本空輸(ANA)さんが家族で共有できるマイルを同性パートナーでも利用できることを発表しました。

 やはり大企業が動くと業界へも影響が大きいんですね。その意味では、NTTグループさんなどが福利厚生における配偶者に関わる制度について、同性のパートナー等にも対象を拡大したことは大きなインパクトがありました。私どもの団体も昨年度だけでも100社を超える企業の担当者に研修にご参加いただくなど、企業の関心は高まっていると実感しています。