【BNPパリバ証券の河野龍太郎氏に聞く】
インフレ目標の柔軟化は評価できる

日本銀行が新しい金融緩和の枠組を導入しました。どのように分析されますか。

<b>河野 龍太郎(こうの・りゅうたろう)氏</b><br/>BNPパリバ証券 経済調査本部長チーフエコノミスト<br/>1964年生まれ。横浜国立大学経済学部卒業。1987年住友銀行(現三井住友銀行)入行。大和投資顧問(現大和住銀投信投資顧問)エコノミスト、米国大和投資顧問エコノミスト、第一生命経済研究所を経て2000年から現職。
河野 龍太郎(こうの・りゅうたろう)氏
BNPパリバ証券 経済調査本部長チーフエコノミスト
1964年生まれ。横浜国立大学経済学部卒業。1987年住友銀行(現三井住友銀行)入行。大和投資顧問(現大和住銀投信投資顧問)エコノミスト、米国大和投資顧問エコノミスト、第一生命経済研究所を経て2000年から現職。

河野: 日本銀行は長短期の金利水準を誘導目標としました。(国債を年80兆円購入する)量的緩和策が実質的に限界を迎えつつある中で、「量重視」から「金利重視」へ方針変更するという演出で、政策の限界を意識させないように見せるレトリック(修辞技法)に徹したと捉えることができます。

大規模な金融緩和が実体経済に負の影響を及ぼしています。

河野: これまでの金融政策の影響で短期金利がマイナス水準に沈み、長期の金利も下押しされています。長短金利の差も小さくなっている状態です。銀行などの収益が圧迫され、金融仲介機能への悪影響という緩和政策の「コスト」の側面が強まってきたのは確かな事実です。

 そもそも、日銀が目標としてきた2%の物価目標にも疑問を持っています。足下ではデフレとは言えない状況となっていますが、経済成長率は低水準のままです。少子高齢化が進む日本では、中長期的な高成長が見込みにくい環境です。デフレから脱却したところで大きな経済成長にはつながらない事が明らかになってきました。

 その点、どのようなコストを払ってでも2%のインフレを達成するという厳格な方針では無く、(需給ギャップなどの経済情勢を考慮しつつ2%の物価安定を目指す)フレキシブル・インフレーション・ターゲットへの移行を日銀が今回明確にした点は評価できます。

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