日銀は円安志向を脱するべき

黒田総裁は、金融緩和の縮小を意味するテーパリングではないと否定していましたが。

唐鎌: 長短金利を誘導目標にはしましたが、(国債の大量買い入れという)量の枠組は変えないのだから、当然でしょう。

 今回は1月に導入を決めたマイナス金利の深掘りも追加緩和手段として挙げています。でも、実質的には(長期金利を上げるには長期債の買い入れを減らすことになるなど)同じ事だと、市場には受け取られかねません。

黒田総裁が就任して以来の大胆な金融緩和の狙いには、物価の押し上げだけでなく、円高是正がありました。

唐鎌: 確かに円安にはなりました。しかし、円安にしてGDP(国内総生産)は増えたのでしょうか。そうはなりませんでした。アベノミクスが取りざたされ始めた2013年以降の14四半期の実質GDP成長率平均は0.2%でした。

 円安になって家計の実質所得は減り、企業は収益を上げましたが、その分、法人税が増えて政府に行きました。結局、円安は所得移転に過ぎなかったとも言えます。日銀はもう、円高は日本経済の逆風、円安は歓迎という思考のくびきから解き放たれるべきです。

今年2月頃からは、一転して円高になりました。日銀はマイナス金利を導入して新たな緩和に踏み出したのに、逆の結果となったわけです。

唐鎌: その後確かにドル円レートは、円高になりました。しかし、ドルの(複数の通貨に対する実質的な強さを示す)実質実効レートは、その間、ほとんど落ちていません。

 ドル円の関係だけ見ると、円高ドル安になったように見えますが、実際にはドルはまだ高いのです。まだドルは安くなり、円高が進む可能性があるわけです。

今回の金融緩和は円高材料になる

日銀の今回の新たな緩和策は、ドル円レートにはどういう影響を及ぼすでしょう。

唐鎌: 米国側の事情から言えば、大統領選を11月に控え、利上げはしにくい。ドル高円安にはなりにくいでしょうね。日銀の政策も、(マイナスになっている長期金利をゼロに維持するなど)全体としては円高材料になるのではと思います。

 我々は年後半に1ドル97円、来年は同92円くらいまでいくと予想しています。

日銀は今回、2%の物価目標が実現し、安定するまでこうした金融緩和政策を続けると明言しました。

唐鎌: 日本は生産年齢人口の減少が既に始まっており、人手不足が顕在化しています。そのおかげで時給が上がり始めました。

 この状況が長く続けば、やがてコストプッシュインフレになる恐れがあります。それは日本経済にとって良いこととは言えません。

 大事なのは、需要を増やす構造改革を行い、その方向からインフレが起きることです。それは政府の役割であり、日銀が単独で物価押し上げを図ろうとするのはおかしいのです。

■変更履歴
2ページの本文中、「2012年末に安倍晋三首相が就任して以後、今年4~6月期までの15四半期のうち、6四半期がマイナス成長でした。」としていたのを、「2013年以降の14四半期の実質GDP成長率平均は0.2%でした。」と変更しました。本文は既に修正済みです。 [2016/09/23 16:15]