日本銀行は21日に開いた金融政策決定会合で金融政策の枠組を変更し、政策の目標を資金供給量から短期・長期金利の水準へと転換することを決定した。同時に、現行のマイナス金利政策は維持し、必要があればさらに引き下げる可能性も表明している。
黒田東彦総裁は会見で「従来の金融緩和を強化する」と語ったものの、枠組変更が実体経済に何をもたらすのか、正直、解釈には難しい部分が残る。みずほ銀行の唐鎌大輔チーフマーケット・エコノミストと、BNPパリバ証券の河野龍太郎チーフエコノミストに見解を聞いた。
(聞き手は田村 賢司、武田 健太郎)

【みずほ銀行の唐鎌大輔氏に聞く】
効果があったのになぜ枠組を変えるのか

みずほ銀行 チーフマーケット・エコノミスト
2004年、慶応義塾大学経済学部卒業後、JETRO(日本貿易振興機構)入構、貿易投資白書の執筆などを務める。2006年、日本経済研究センターへ出向し、日本経済の短期予測などを担当。2007年、欧州委員会経済金融総局(ベルギー)に出向。2008年10月、みずほコーポレート銀行(現・みずほ銀行)入行。国際為替部で為替分析を担当している。著書に『欧州リスク 日本化・円化・日銀化』(東洋経済新報社、2014年7月)などがある(写真:柚木裕司)。
長期金利を誘導目標とする新たな金融緩和策をどのように評価していますか。
唐鎌: とにかく分かりにくいという印象です。日銀は、(市中に供給する通貨量である)マネタリーベースの増大で物価押し上げを図る量の緩和と決別し、長短金利を誘導する政策に変えたわけですが、では量の緩和は効果がなかったのかといえば、効果はあったと言っている。
効果はあったが、2014年半ばからの原油価格下落や消費税引き上げによる消費停滞など外的要因がそれを消したというような言い方です。効果があったのならなぜ政策の枠組を変えなければいけないのか。
しかし、量的緩和の柱である年間80兆円の国債買い入れは持続すると言っています。
唐鎌: それも分かりにくい。長期債は購入を減らして長期金利をゼロに保つということでしょうが、購入額は前と同じだという。実際には、買い入れを減らしたり増やしたりするように買い入れ額に幅を持たせる形になるのではないでしょうか。
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