綱渡りのスケジュール
お話を聞いていると、TPPが発効するにしてもタイトなスケジュールですね。
羽生田:特に、日本はEU(欧州連合)とのEPA(経済連携協定)が控えていますので、スケジュール的には綱渡りです。まずEUは日EU EPAに関して、TPP並みの自由化では足りないと言っています。TPPの関税撤廃率は95%(品目数ベース、貿易額ベースともに)ですが、それを100%近くまで自由化を進めろというわけです。
もっとも、今この瞬間にEUに対して譲歩するようなカードを切るわけには行きません。TPPの国会審議が進んでいる中でそんなカードを切ればTPPの国会審議に悪影響を与えるかもしれませんし、クリントン氏も困るでしょう。「EUに対して日本はさらなる自由化を認めたのに、USTR(米国通商代表部)は弱腰ではないか」という批判が来ますので。
つまり、TPPの国会審議が終わり、次の大統領が決まるまで日EU EPA交渉は進みません。ところが、英国のEU離脱の影響で、来年はEUの通商担当が英国とEUの交渉にかかりっきりになります。ドイツの総選挙やフランスの大統領選挙が予定されていることを考えれば、年内には日EU EPA交渉を終えなければならない。
米大統領選の前に日本がTPPの承認案・関連法案を国会で通し、米国がレームダック期間にTPPの議会承認を得る。並行してEUとのEPA交渉を進める──。日本の通商交渉にとって、これはかなりのナローパスでしょう。いずれにせよ、米大統領選の前に国会でTPPの承認を得ることは極めて重要です。
レームダック期間の議会承認を目指す上では、オバマ大統領が米議会をどれだけ説得できるかもカギですね。
羽生田:米国の議員の中にはTPPのような重要な政策をレームダック期間に決めるべきではないという意見もあります。なんとしてもTPPを成立させるというオバマ大統領の強い意志が必要でしょう。実際、ライアン下院議長も現時点の議会承認には否定的ですが、裏を返せば議会とのさらなる調整を求めているということでもありますので。
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