高橋:その為に、実際に働くことになる現場まで私自身が出向き、そこで働く若手社員の方に直接話を聴いて判断しています。

最近、プレ就職に成功した子は、例えばどんな子ですか。

高橋:22歳で、大変苦労をしてきた子です。両親と早めに死別し入所して、中学を卒業して専門学校に進学したのですが、1年半で中退してしまい、施設を出ることになりました。住所も仕事もない彼は、まず住み込みで建設の仕事を始めましたが、1カ月で辞めてしまいます。次は、新聞配達の仕事を1カ月で辞め、その後、再び建設会社で働き、ここには2年ほど在籍しましたが、先輩社員の指導という名の暴力行為が続き、結局、退職します。その後、やはり住み込みの飲食業で、最低賃金以下の違法な長時間労働を1年半させられていました。

…。

高橋:でも、決して能力が低いわけじゃないんです。社会経験の少なさもあって、今はまだ複数の業務を同時進行したりすることは苦手です。その代わり、自分で計画を立ててそれを粛々と実行する業務は、実に根気よく遂行します。そんな彼の特性をある企業が理解してくれてプレ採用してくれました。それが、今やっている営業の仕事です。

散々辛い思いをしてきたからこそ、強い

営業ですか。なかなか厳しい職種ですが、大丈夫でしょうか。

高橋:大丈夫です。いきなり飛び込み営業をやったり、最初からノルマをクリアしていったりするのは難しいかもしれませんが、今、お世話になっている会社は、育成体制がしっかりしているのと、こちらから電話を掛ける仕事なので、自分のペースで営業活動ができるという点で向いていると思います。

しかし営業先で怒鳴られたり、辛い思いをしたりするのでは…。

高橋:もちろん理不尽な言われ方をされたり、納得いかない事もあったりするかもしれませんが、そこは当社のメンターの出番です。目の前の事実を表面的な情報だけで判断をしてしまいネガティブな考えに陥る場合もあるので、そういう場合は、物事の捉え方や考え方、「こういった視点もあるよ」というのを伝えて、より広い視点で考えられるようにサポートをしていきます。そうやって、悩んだり失敗を繰り返したりしながら一歩ずつ成長していける環境が大切だと思っています。これまで散々辛い思いをしてきましたから、ちょっとやそっとのことではへこたれない強さも持っている子です。

なるほど。同世代の普通の若者達とは比べ物にならない苦労をしてきている。苦労せずに育った若者に比べるとずっと骨のある子かもしれませんね。

高橋:こうした子供達を一人ひとりサポートし、企業や児童養護施設、他の支援団体ともスクラムを組み、児童養護施設出身者が路頭に迷わない社会を作っていく。これが最終目標です。

■変更履歴
記事掲載当初、本文中で「社会的擁護」としていましたが、正しくは「社会的養護」です。お詫びして訂正します。本文は修正済みです [2017/09/18 10:30] また「負のスパイラルを経つ」は、正しくは「負のスパイラルを絶つ」です。お詫びして訂正します。本文は修正済みです [2017/10/06 12:10]
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