保護者がいなかったり虐待を受けていたりする児童を保護する「児童養護施設」。父母との死別や育児放棄など様々な事情により施設で暮らす児童たちの課題の1つが退所後の生活だ。大学に進学し就職する児童もいる一方で、転職を繰り返し貧困化していくケースもあるという。そんな苦境に陥った児童養護施設出身者の支援を掲げ、設立されたベンチャー企業がある。代表者に話を聞いた。

聞き手は鈴木信行

<b>高橋 大和</b><br /> 1981年生まれ、長崎県出身。大学卒業後、2004年コナミスポーツ&ライフ入社、インストラクターとして8年間勤務後、高校時代の友人が創業メンバーという縁で12年にボーダレス・ジャパンへ入社。国際交流シェアハウス事業の新規物件開発担当、014年バングラデシュの雇用創出を目的とした革製品OEM事業の事業部長を経て、17年5月より若者の就労支援に取り組むべく<a href="https://step-shushoku.jp/" target="_blank">ボーダレスキャリア</a>をスタート
高橋 大和
1981年生まれ、長崎県出身。大学卒業後、2004年コナミスポーツ&ライフ入社、インストラクターとして8年間勤務後、高校時代の友人が創業メンバーという縁で12年にボーダレス・ジャパンへ入社。国際交流シェアハウス事業の新規物件開発担当、014年バングラデシュの雇用創出を目的とした革製品OEM事業の事業部長を経て、17年5月より若者の就労支援に取り組むべくボーダレスキャリアをスタート

児童養護施設の出身者を支援するサービスを展開していると聞きました。

高橋:サービスの対象者は児童養護施設出身に限定しているわけではなく、国から何らかの「社会的養護」を受けている家庭の児童はあまねく対象になります。ただし、現在、サポートしているのはいずれも児童養護施設出身者です。

彼らはどんな苦境に陥っているのですか。

高橋:児童養護施設は原則的に、中学卒業後、進学しない場合は施設を出なければならず、高校卒業後や高校を中退してしまった場合も、ほとんどは施設を出て就職することになります。その際に問題になるのが住む場所の確保で、自分でアパートなどを借りるには保証人が必要になりますが、彼らは保証人を立てることが難しいのです。

多くの子は、礼金・敷金に当てるおカネも十分にないし、保証人になってくれる保護者もいない…。

高橋:不動産契約に関しては、施設長が保証人になる制度もあるにはあるのですが、1人の施設長が大勢の退所者の保証人になるのには限界があります。

それでは家を借りられません。

1回、就職を失敗したらたちまち窮地に

高橋:そういった事情もあり、自分の希望に反して「社宅や寮付きの仕事」を選ばざるを得ない者もいます。具体的な業種で言えば、製造業や建設業です。もちろん、そうした仕事に適性がある子も沢山いますが、中には向いてない子もいる。その結果、すぐに退職してしまう子も少なくないんです。問題は、そうやって1度目の就職先を辞めてしまってからです。

1度目の就職先を退職した時点で、彼らは住む場所を失ってしまいます。

高橋:仕事を探そうにも住所不定だと就職先は1度目以上に限定されてしまう。より過酷な製造や建設現場、あるいは風俗関連などに身を寄せる子も出てきます。友人の家で居候しながらフリーターになる子もいますが、それとて結局、住所がないので労働条件のいい働き先はなかなか見つかりません。月給8万円で週6~7日の違法労働をさせられていた子もいます。そうなると、やがて2回目の就職先も辞めてしまう。

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