日銀が7月末の金融政策決定会合で新たな政策を導入した。長期金利のゼロ%誘導を維持しながら変動幅の上限を従来のプラスマイナス0.1%から同0.2%に広げた。前日銀審議委員で現在は野村総合研究所エグゼクティブ・エコノミストの木内登英氏は「これは金融緩和からの事実上の正常化策だ」と言う。アベノミクスの大きな柱となってきた金融緩和策はどう変わるのか。見通しを聞いた。

日銀が7月31日に開いた金融政策決定会合以降、日米欧で長期金利が上昇しました。日銀の新たな政策が影響したのでしょうか。

木内登英・野村総合研究所エグゼクティブ・エコノミスト(以下、木内):日銀は長期金利の誘導目標を0%に維持しましたが、変動幅は従来のプラス・マイナス0.1%から同0.2%へ拡大するなど、いくつかの新たな仕組みを導入しました。

じわりと引き締めに動いた?
日銀の7月の政策決定会合の主な内容
主な項目 概要
長期金利操作 長期金利の誘導目標ゼロ%を維持。変動幅は従来のプラスマイナス0.1%を0.2%に。長期国債の買い入れ増加額を「年間約80兆」とする言葉は残した
ETFとJ-REIT 買い入れ増加額を、ETF(上場投資信託)は現在の年間約6兆円、J-REIT(不動産投資信託)は同900億円を維持。ただし、市場の状況に応じて買い入れ額は変動する。ETFはTOPIX(東証株価指数)連動型の買い入れ比率を増大する
マイナス金利 維持。金融機関が日銀に預ける当座預金のうち約10兆円にマイナス0.1%の金利をかけている。この残高を減らす。半減と見られる
フォワードガイダンス(将来の指針)導入 「当分の間、現在のきわめて低い長短金利水準を維持」するという指針を新たに示した。「当分の間」は正確には示さず。日銀が引き締め方向の政策に動くとの市場の観測を打ち消す狙いか

 わずかながらでも金利が上昇するということで、これまでゼロ金利下で外債などに向かっていた国内機関投資家のマネーが巻き戻された可能性はあります。しかし、大きくはないと思います。むしろ、米FRB(連邦準備理事会)の引き締め継続観測などで金利が上昇したという方が先で日銀とは直接関係はないのではないでしょうか。実際、さして円高にはなっていません。

 それより日銀の新たな政策にはもっと大きな意味があると思います。

木内登英(きうち・たかひで)氏
1987年、野村総合研究所入社。90年に野村総合研究所ドイツ、96年には野村総合研究所アメリカで欧米の経済分析を担当。2004年、野村証券に転籍。07年に経済調査部長兼チーフエコノミストとして日本経済担当。12年から5年間、日銀審議委員を務め、17年7月から野村総合研究所エグゼクティブ・エコノミスト(写真:清水 真帆呂)

日銀は「金融緩和政策の持続性を高める」ためだとしていますが。

木内:事実上の正常化策だと思います。日銀は2016年9月に長短金利操作付き量的・質的金融緩和政策を導入し、それまでの国債買い入れによる量の緩和から長期金利をゼロ%に誘導する金利操作に変えました。

 この後、長期国債の買い入れによる増加額を年間約80兆円で維持するとしながら実際には40兆円程度に抑え始めました。私から言えば、これが事実上の正常化策第1弾でしたが、今回はそれに次ぐ第2弾といえるでしょう。