答えのない質問に答えるために必要なこと

本書のアイデアは単語カードに書き記した。

子供の関心がある分野を学ぶべきだと頭では思いますが、いざロシア文学と言われると、「そんなものを勉強して仕事はどうするの?」と普通に言ってしまいそうです。

ハートレー:人間らしさを失わずにテクノロジーに関心を持たせるにはどうすればいいのか、ということも最近は考えています。ソフトウェアのコードがどういうものかがわかれば恐れる必要はありません。同時に、人間的な側面をなくしてもダメです。

 一つの事例として、幼稚園から12歳までの子供向けに実践されている”messy question”というメソッドに関心を持っています。子供にiPadを与えて4~5人のグループに分け、「もし耳が四角だったらどうする?」というような答えのない質問をするんです。

 そんな質問はグーグルで調べても答えはでてきませんし、ウィキペディアにも回答はありません。でも1時間くらい子供に時間を与えて、「耳が四角になったら何が起きるか考えて」と聞く。

 子供は音響学や耳の働きに関するYouTubeを見るかもしれない。耳についての書籍を読むかもしれない。いずれにせよ、子供たちが様々なアングルで四角い耳について考えてディベートを始めるでしょう。「OK。このソースは信頼できる。このウェブサイトは嘘くさい」などと議論するかもしれません。情報の洪水の中で、何が信用できて何が信用できないのか、何が信頼できてできないのか、ということを学ぶのは大人にとっても重要です。

 こういったメソッドに触れると、子供はiPadを使うのを恐れませんし、グーグルで調べるのも、YouTubeを見るのも怖がらなくなります。一方で、ウィキペディアに行っても答えを見つけることもできませんし、先生に聞くこともできません。だって、答えがないから。こういう答えのないグレーな質問に答えるために、テクノロジーを使ってセオリーを作るというのはとても興味深いと思います。

問題が見つけられなければ、外の人からもらえばいい

現実を見ると、シリコンバレーの住民はテックの最先端にどっぷり浸かっている反面、それ以外の人々はテクノロジーに対する知識があまりない。二極化がかなり進んでいるような気がします。

ハートレー:ある意味で、シリコンバレーは米国の普通の生活からは乖離しているかもしれません。自動運転カーや空飛ぶ車を開発している人々がいる一方で、普通の人々が日常的に抱えている問題をみんな忘れている。こういう普通の人々に影響を与えるイノベーションはまだまだたくさんあると思います。正直、「どうすれば今晩のレストランに効率的に着くか」というような、1%の人々が抱えている問題なんてどうでもいい(笑)。

 根本に関わるようなイシューに優れた才能をどやって集めるか。一つの好例は国防総省だと思います。国防総省が自ら語っているように、同省にはどう解決すればいいのかわからないような課題がたくさんあります。そういう問題をシリコンバレーに持ち込んでいます。ワシントンから優秀な人材を”輸入”するのではなく、課題をシリコンバレーに”輸出”しているんです。

 現在、国防総省や国務省から持ち込まれた課題を解決するため、スタンフォード大学に"Hacking for Defense"や"Hacking for Diplomacy"といったコースがあります。ここで、学者や退役軍人、エンジニア、デザイナーなどのチームが課題に対処しています。現在は13の大学が同様のコースを設けました。(参考記事:「Hacking Defense and Diplomacy in Silicon Valley」)

 多くの若者は次のザッカーバーグになりたいと思っています。みんな問題から始めなければならないことを忘れていますが、自分たちで問題が見つけられなければ、外にいる人からもらえばいい。逆に言えば、政府や企業、NGOなどがFuzzy & Techieのグループに課題を提示できれば、もっと多くのイノベーションが起こせると思います。