それは単に雇用を生み出すというだけではなくて、途上国でその国のエンジニアを育て上げるということはその国の産業発展に貢献すると。そういう考えの下でやっているということですね。

松崎:おっしゃる通りです。今は電気がまったくない地域で、10年、20年先も仮にまったく電気がないような地域だと、シュナイダーのビジネスも起きないじゃないですか。CSRというと、わりとアピール的なことを意識する会社がありますが、シュナイダーはそうではありません。最終的にはシュナイダーのビジネスにつなげたいわけですよ。

 なので全然電気が通ってない、例えば砂漠でソーラーパネルと電気のセットを設置する。そして、現地の人たちが自らメンテナンスしてほしいので、そういう技術者をちゃんとトレーニングする。そういう技術者を10人、20人と増やしていけば、将来的にはシュナイダーはもっと大きな製品、ソリューションをその地域に提供できるかもしれない。もしかしたらゼロから何十倍のビジネスになるかもしれない。

自社のビジネスにつながるCSRがある

長期的な視点で取り組んでいるということですね。最近ではマイケル・ポーターがCSV(共通価値の創造)を提唱していますね。企業は本業を突き詰めることが、すなわち社会に貢献しているんだ、と。

松崎:そうです。だからただ単に単発的なCSRじゃなくて、CSVという発想で動いている。シュナイダーの大きなビジネスになるのは5年後か10年後か分からないですけれども、そういう電気の技術者を発展途上国で養成して、マイナスになることはまったくないわけです。

 数値目標も掲げています。低所得者層15万人にエネルギー分野の教育を実施すると。去年はまだ7万3000人で、今9万4000人で、それが2017年末までには15万人にまで増やす。これをちゃんと数字でトラッキングしていて、こういうのを全部指標として四半期ごとに全社で共有しています。

先進国ではどんな取り組みをしていますか。

松崎:先進国はエネルギーの消費量を削減する取り組みが多いですね。例えば、ビルの空調をもっと効率的にすればCO2の排出量も減らせるし、電気代も安くできるという提案をしています。

 例えばデータセンターって簡単に言うとコンピューターを冷やすために使っている電気が半分ぐらいで、実はそれ以外のいわゆるデータセンターを維持するために使っている電気が半分ぐらいです。そこでサーバーを冷やす費用を10%減らせば、全体として電気代は5%減らせます。これは大きいですよ。

 先進国では将来、1人当たりの消費電力量というのは下がってくるでしょう。家電製品なんて、新製品が出るたびに消費電力はどんどん下がっています。我が家も冷蔵庫を替えたらすごく電気代が安くなった。途上国は別として、もう電気が行き渡っている先進国では、仮に人口がフラットだったとしたら電気の必要量って絶対減っていくと思うんです。

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