国民投票の結果、英国がEU(欧州連合)から離脱することが決まるなど、企業を取り巻く事業環境は目まぐるしく変化している。このような変革期こそ、地に足が付いた企業経営が求められるはずだ。

 参考になる資料がある。世界経済フォーラム(通称ダボス会議)で発表される「Global 100 Most Sustainable Corporations in the World(世界で最も持続可能性のある企業100社)」だ。カナダの出版社Corporate Knights社が毎年まとめているもので、財務状況やサステビリティー(経営の持続性)などを総合的に評価してランキングを作成している。(詳細はこちら

 残念ながら、同ランキングで日本勢の存在感は薄い。日本企業で最高位は80位の武田薬品工業で、100位内に入っているのは武田を含め4社にとどまっている(ランキングは次ページに掲載)。

 このランキングの常連となっているのがフランスの電機機器メーカー、シュナイダーエレクトリックだ。同社の日本法人で代表取締役を務める松崎耕介氏にサステナビリティーに対する考え、そして外資系企業で働く心構えについて聞いた。

(聞き手は坂田 亮太郎)

「世界で最も持続可能性のある企業100社」に今年も選ばれました。

松崎:当社としては重視しているランキングなので、うれしいですね。今年は12位で、去年が9位。ここ3~4年は10位前後で推移しています。

<b>松崎耕介(まつざき・こうすけ)氏</b><br /> シュナイダーエレクトリック代表取締役。1984年京都大学工学部卒、日本IBM入社。2001年、米IBM上席副社長補佐に就任、ニューヨークでの勤務を経験。2003年、日本IBMストレージ・システム製品事業部長、2008年執行役員、2014年常務執行役員に就任。2014年11月、シュナイダーエレクトリック入社。2015年1月に代表取締役副社長に就任、2015年10月より現職(写真:北山 宏一、以下同)
松崎耕介(まつざき・こうすけ)氏
シュナイダーエレクトリック代表取締役。1984年京都大学工学部卒、日本IBM入社。2001年、米IBM上席副社長補佐に就任、ニューヨークでの勤務を経験。2003年、日本IBMストレージ・システム製品事業部長、2008年執行役員、2014年常務執行役員に就任。2014年11月、シュナイダーエレクトリック入社。2015年1月に代表取締役副社長に就任、2015年10月より現職(写真:北山 宏一、以下同)

松崎:シュナイダーエレクトリックの創業は1836年、シュナイダー兄弟というドイツ系フランス人が起こした会社です。今年で180周年を迎えました。19世紀は鉄鋼産業、重機、造船向けに機器を提供し、20世紀は主に電力と自動化管理システムを手掛けてきました。時代の変遷に合わせて、事業内容を変えてきました。

 ここ15年ぐらいで会社の売上高は2倍ぐらいに増えました。成長分の大半はM&Aなんですけれども、エネルギーという軸をぶらさず、世界中でM&Aを繰り返してきました。

 ただ、M&Aと一口に言っても、やり方は2通りあると思っています。シュナイダーのやり方と対極にあるのは、私が以前働いていた米IBMです。

シュナイダーとIBMのM&Aはやり方はまるで違う、と。

松崎:全然違いますね。IBMもここ20年ぐらいで200社ぐらい買収しています。毎月、何らかの会社を買収しているというペースです。

 IBMの買収のやり方は、買収契約が終わったらすぐに相手企業をIBMの一部門に入れちゃうんですね、ぽこっと。ビジネスのやり方も、それこそ人事制度も、いろいろな会計基準とかも全部IBM流に吸収してしまう。

 買収された側のトップは大半がお辞めになる。社員や役員でも、IBMのやり方に合わない人はやはり辞める。IBMとしては、買収した会社の製品やソリューション、あるいは事業領域が欲しいわけですから。それはそれでいいと、割り切っているのです。

 一方、シュナイダーの買収のやり方は全く異なります。完全買収したとしても相手先の企業は基本的に残します。吸収するとしても、3年とか5年かけて緩やかに統合していくというイメージですね。

 これは私の個人的な意見なんですけれども、アメリカの東海岸の会社とヨーロッパのフランスの会社の違いかなと思っています。歴史的に、フランスって植民地をいっぱい持っていたじゃないですか。その植民地政策というか、そういうのにわりと長けているんじゃないかな。逆に買収した会社の人のいろいろなモチベーションとかそういうのも維持しつつ伸ばしていこうという戦略なので、ここ15年で2倍ぐらいにちゃんと成長している。

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