スムーズに行きましたか。
小国:最初は正直、面食らいました。テレビ番組を作っている人間にとって、番組は「作品」であるという意識が強いんです。45分の番組なら45分の「物語」を作る。ストーリーを紡いでいって、終盤までぐいぐいと引っ張っていって、最後の最後にカタルシスを生む。NHK的に言えば、それがコンテンツ作りの王道なわけです。
はい。
小国:それがウェブ制作のプロにかかると「そういうのは、とりあえずどうでもいいです」ときっぱり(苦笑)。「もう3秒で離脱されちゃいますから、とにかく情報は端的に、感情を動かす形で」と言いながら、いわゆる番組の本筋とは違うところからインパクトのある部分を取ってきて、そこだけドンと出す。
まさにネット的。
小国:理屈ではその違いや必要性は分かっているつもりなんですが、NHK的な手法との大きな差に葛藤というか戸惑いはありました。
新しいことをやろうと考えた小国さんがそう思うなら、社内的にはもっと抵抗感や戸惑いがあったのでは?
小国:あったと思います。実際、NHKの人間がNHKの番組をいじるのは難しいんです。45分の番組を5分に凝縮する。これはできます。しかし「作品」を全く別物にするというのはなかなか…。
でも、とにかく外部の目線で別物を作って配信してみたら、放送を見逃した方にも番組のことを知っていただけて、若年層と思われる方々からたくさんコメントが付いて。調べてみるとユーザーの70%を10~30代が占めていて、これはU59問題解決への糸口になるんじゃないか…そんな手応えや実績が見えてくると、「これもありじゃない?」と面白がってくれる人も増えてきました。
あなたも5分で『プロフェッショナル』に
1.5chの前に、小国さんは『プロフェッショナル 仕事の流儀』の公式アプリを作られたんですよね。

小国:はい。僕はプログラムを書けませんので、こんなアプリを作りたいという企画を立てて、これも製作会社の皆さんの協力を得て、一緒に仕上げていきました。
2016年1月にリリースして150万ダウンロードを突破。「ACC CM FESTIVAL」や「日本賞」で優秀賞を受賞するなど、国内外で高い評価も受けられて。
小国:ありがたいことです。
で、あのアプリって、他局が『プロフェッショナル』のパロディーを作る時に使うフォーマットですよね。オープニングの人物紹介を、好きな写真で面白おかしく自由に作れちゃうという。
小国:ええ(苦笑)。
番組をいじる…先ほどの別物に仕立て直すというのもNHK的にはハードルが高かったようでしたが、ここでのイジるは、揶揄するといった意味合いがありますから、さらにハードルが高かったのでは?
小国:看板番組のひとつですし、もちろん、いいかげんに扱うつもりは毛頭ありませんでした。でも、若い人たちになかなか届かないという課題については例外ではなく、若年層にリーチする方法として、まずはスマホアプリを作ってみようと企画がスタートしまして。
番組告知を中心に、というのが一般的なやり方ですが…。
小国:でも、それじゃあ埋もれてしまう。テレビ的発想では、作り手が生んだ作品を、視聴者の皆さんに見ていただく、という一方方向的な捉え方がいわば常識ですが、ネットで双方向のやり取りに親しんでいる若い人たちにリーチしようという中で、単なる告知じゃダメですよね。とにかく、触れてもらわなきゃいけない。そのための仕掛けを考えた時に、これはとことん、イジってもらおうじゃないかと。
反発も覚悟で。

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