3月にスタートしたNHKの動画サイト「1.5ch」が、じわじわとユニークなコンテンツを発信し続けている。本放送とは一味違う味付けで話題を集める仕掛け人は、開発推進ディレクターの小国士朗さんだ。彼は昨年『プロフェッショナル 仕事の流儀』公式アプリの開発も手がけ、「誰でもプロフェッショナルになれる」仕掛けがウケて150万ダウンロードを超える大ヒットに。“番組をイジる”プロジェクトを次々と仕掛ける小国さんはどんな人物なのか、お堅いイメージのNHKで諸々大丈夫なのか、話を聞いた。(聞き手は坂巻正伸)

3月にスタートしたNHK動画サイト「1.5ch」、なかなかユニークなコンテンツが増えてきましたね。

小国:ありがとうございます。「NHKの番組のオイシイところをオイシイかたちでお届けします」というコンセプトでサイトを立ち上げて、番組のエッセンスを凝縮した短めの動画コンテンツが現在200本を超えました。

<b>小国 士朗(おぐに・しろう)</b> NHK制作局 開発推進ディレクター。2003年NHK入局後、山形放送局を経て、東京の経済社会情報番組部のディレクターとして『クローズアップ現代』『プロフェッショナル 仕事の流儀』『72時間』など主にドキュメンタリー系の番組を手掛ける。2013年に電通への研修出向を経て、NHKコンテンツのプロモーションやデジタル施策を企画立案する“一人広告代理店”的な活動を開始。150万ダウンロードの大ヒットなった『プロフェッショナル 仕事の流儀』公式アプリや、3月にオープンした動画サイト「1.5ch」などを仕掛ける。
小国 士朗(おぐに・しろう) NHK制作局 開発推進ディレクター。2003年NHK入局後、山形放送局を経て、東京の経済社会情報番組部のディレクターとして『クローズアップ現代』『プロフェッショナル 仕事の流儀』『72時間』など主にドキュメンタリー系の番組を手掛ける。2013年に電通への研修出向を経て、NHKコンテンツのプロモーションやデジタル施策を企画立案する“一人広告代理店”的な活動を開始。150万ダウンロードの大ヒットなった『プロフェッショナル 仕事の流儀』公式アプリや、3月にオープンした動画サイト「1.5ch」などを仕掛ける。

番組をダイジェストした予告編などは本放送でもたくさんオンエアされていますが。

小国:1.5chは、見逃した番組のおいしいところをキャッチアップできるのがいいところで、予告編とはまた違った役割を担っています。
 そもそもは、ずっともったいないなあと思っていたんです。いい番組がたくさんあるのに、ちゃんと皆さんに届けられていないことが。

アウトプット先としては、1.5chのサイトにコンテンツがアーカイブされていって…。

小国:フェイスブック、ツイッター、ユーチューブで配信しています。

新しい企画を立ち上げてみて、社内の反応はどうでしたか?

「U59問題」と「どうでもいいです」の狭間で

小国:事前に社内アンケートを取ったのですが、思いのほか好感触でした。そもそもNHKは今、「U59問題」に直面していまして。

U59?

小国:視聴者の高齢化が進み、59歳以下の方々、特に若い人たちになかなか見ていただけないという課題です。番組制作の現場としてはいい番組を作っている自負はあるのだけれど、なかなか若い人にリーチできないという忸怩たる思いがあります。
 いわゆるデジタル世代の若者たちにネット配信のような形で番組の情報を届けたいという気持ちは持っているのですが、いかんせん、番組制作に全力を投じていると、そうしたプラスアルファにまで手が回らないという声をたくさん聞きました。
 そこで、専任の編集部を立ち上げてウェブ用のコンテンツを作り、それを流通させる仕組みまでやります、と宣言して始めました。

編集部の体制は?

小国:今のところ4人です。私が編集長としてコンテンツの制作や配信計画などを担当して、社内外の諸々の調整をしてくれるプロデューサーと、放送番組制作班との様々な調整をしたり、動画制作の進行管理や著作権管理を行うスタッフがいます。

WEB用コンテンツの制作は…。

小国:一部は内製ですが、基本は外部のコンテンツ制作会社に協力してもらっています。

いわゆる番組制作会社とは別の?

小国:はい。「デジタルの世界の文法」を知っている専門家たちと組んで、社内の会議などにも出てもらって。

次ページ あなたも5分で『プロフェッショナル』に