「議論できる展覧会」軽井沢で主導

セゾングループは輝かしかった1980年代までとは対照的に、バブルの負の遺産の処理で、1990年代後半は大変苦しみました。清二さんはご家庭でも、ご苦労の様子がありましたか。
堤:父の部屋のドアが少し開いていると、電話で怒鳴っている声が聞こえてくるような時代が、この90年代の終わりの方ですね。ちょうど1998年から2000年の約2年だけ、私も勉強で西武百貨店の非常勤役員をやらせていただきました。(セゾンが)ちょうど一番大変な時代でした。
銀行から負債の返済を迫られる中で、西武百貨店の経営者と創業者の堤清二さんが対立するような事態でしたね。
社内で派閥で分かれて、私は少数派でした。揚げ足を取られて、徹底的に空中戦でたたかれることもありました。私は20代の終わりの方だったので、今よりも免疫がなかったですね。今だったら平然と演技もできますけど、当時は多少つらいときもありました。父がこのころに書いていた詩などの作品はすごかったですね。自己批判も出てきます。作家として良いものを書くことで、バランスをとっていたと思うのです。
軽井沢のセゾン現代美術館では、7月24日にスタートする展覧会から、たか雄さんが本格的に指揮をとるそうですね。
堤:はい。私が主体的に企画して、キュレーションをやります。題は、かなりベタに「恋する現代アート」にしました。今までとは、がらっと違ったイメージにしようと思います。見て楽しんで、見て議論しやすいような展覧会にするつもりです。見て議論しないと、現代アートって面白くないんですよね。過去うちの美術館って、入館者数も多くなかったので、静かにじーっと見たい方が多かった。よく分かっている方はそれでいいのですけど、ちょっとしゃべったりすると、一般的な美術館よりも警備の方に注意をされていた。
MoMAとか、パリでいうとポンピドゥー・センターみたいに人が多い美術館って、ガヤガヤしています。聞いていると、作品を見ていろいろ言っているんですよ。これは何、え、太陽じゃないよね・・・そういう議論が聞こえる場所にしたいのです。
並べ方も思い切ったものにしようと思います。自分でしか思い付かないような並べ方とか、あえて偉い先生からはちょっとおしかりも来るようなものにもしたいと、意識しています。
作品はどんなものを展示しますか。
堤:そうですね。リーガ・パングの「追う時間」や、宇佐美圭司さんの「やがて総ては一つの円の中に」などです。収蔵していても展示する機会が少なかったものもあるのですけど、それもなるべく出すような形でやりたいのです。
これからの活動について展望は。
堤:ポイントは現代アートというキーワードから絶対ぶれないということで、まずセゾンアートギャラリーの運営をうまく回せるようにしたいですね。もともと固定の箱は持たずに、企画展で見せるときだけ、どこかを借りるという案もあったのですが、思い切って大きな箱で常設のギャラリーを設けたのです。日常性というのを追求したときに、気楽に食事ができてというのはすごく重要だなと考えて、カフェも併設しました。最後まで美術館の関係者から反対もある中で押し切ってやった面もあります。早く軌道に乗せられればと思っています。
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