現代美術の「弱点」を変えて行きたい
西武百貨店の建物自体が、情報発信拠点のようなイメージでしたね。
堤:そうなんですよね。ずっと順調だったのですが、百貨店そのものが、いろいろと難しい時代になって、美術館は1999年にクローズしてしまいました。その際、収蔵していた作品を軽井沢に全部持っていったのです。ただその後は、あまり一般の人には告知をせず、本当に現代美術が分かる人のための美術館みたいな形でやってきました。
たか雄さんがセゾンで文化関連の仕事に参加した経緯は。
堤:若いころから個人的に美術は好きでした。私、大学を卒業後にフランスへ留学したんですけれど、そのあたりから本格的に美術に興味を持ち始めました。どんどん面白くなって、いろいろ調べていって、行き着いたのが現代美術だったのです。美術一本で、やっていこうと決めたのは、2006年の秋ぐらいです。その後、勉強しながらセゾン現代美術館の仕事に関わりました。2013年11月に父が亡くなり、美術館の方は私がやらせてもらいますということで代表理事になり、それ以降は、さらに本格的に取り組んでいます。
軽井沢のセゾン現代美術館が「上級者向け」のイメージもある中で、別の場所で気軽に寄れるギャラリーが必要と考えたのですか。
堤:ええ、まさにそうですね。軽井沢は東京から少し遠いというのもあって、東京に拠点が欲しかったのです。これまで軽井沢でやってきた、企画展とか収蔵作品の多くは、20世紀の巨匠の作品になっています。海外の作家で代表的なところでは、アンディ・ウォーホル、ジャスパー・ジョーンズ、マーク・ロスコなどが目玉になっています。それに対して、東京につくったセゾンアートギャラリーは、より気楽に触れられる、作品や作家を紹介したいと思っています。どちらかといえば日常のデザインに近いような作品も含めて、扱っていきたいのです。例えば若い人が、校外学習などで現代美術をみても、退屈だな、難しいな、というふうになってしまうのが現代美術の弱点だと思っているので、それを変えるきっかけをつくれればと思います。
ギャラリーでは、まだ評価が定まっていない新進の作家も積極的に取り上げていくわけですね。
堤:そうですね。例えば3月に多摩美術大学の大学院生の展覧会をやりました。学生の1人は私がネットで見つけて、自分で直接アプローチしました。父も巨匠の作品も集めていたと同時に、一緒に戦友として育ってきたような作家がいました。例えば宇佐美圭司さんという画家は本当に父の戦友です。セゾンの美術館で展覧会を開くなど、若いときから一緒にやって力をつけてきたのです。
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