石井:発展途上国で障害者が多いのは、一つは、後天性の障害者が多いからだと思います。まず、交通事故が頻繁に発生する。道路インフラも悪いし、交通ルールを守る意識も高いとは言えず、重大な後遺症が残る事故があちこちで起こります。加えて糖尿病も深刻です。極端に甘いものを好む人も多く、糖尿病に関する知識もほとんどないので合併症で足を切断したり、失明したりする人が後を絶ちません。後、ドラッグによる障害も多いです。流通しているドラッグの質も悪いので、余計、後遺症が残りやすい。

 また、貧しくなれば、真っ先に異常が現れるのは目と歯です。目は体の中で粘膜が剥き出しになっている唯一の部分だけに、衛生状況が悪い国では細菌感染してそのまま失明するケースが日本よりずっと多い。そして、内臓が機能不全になれば人は死ぬが、目が見えなくなっても死なない。だから貧困国になるほど目が不自由な人を街で見かけることが増える。紛争地などでは爆風などで目を失う人も加わります。歯が悪い人が貧困国に多いのも同じ理屈です。歯並びを矯正できないし、歯磨きなどの習慣がない人も多く口内の衛生環境がとても悪い。

インド・ムンバイの魔窟で見たもの

著書では、近親婚を繰り返した結果、障害者が次々に生まれるスリランカの村の話も登場します。9家族の中で婚姻を繰り返し、生まれた子供が全員障害を持ち、次々と死んでいくというエピソードも紹介されていますが、そういう意味での先天性障害も多いのでは。

石井:そうした風習としての近親婚より、児童虐待での近親相姦により障害を持つ子供が生まれるケースの方が多いと僕は思っています。実は日本にも表に出ないだけでその手の事件は沢山ある。日本と発展途上国との最大の違いは中絶する仕組みの有無です。

なるほど…。どれを取っても救いようのない話ですが、『物乞う仏陀』の最終章では、さらに救いようのない話に向かっていきます。インド・ムンバイ編です。

石井:異常な街であることは噂に聞いていましたが、実際に現地を訪れると、駅前からまさに異様な雰囲気が漂っていました。まず、子供の物乞いがとにかく多い。そして他の国の障害児と比べ、明らかに障害の種類が違う。手足のない子供が多いんですね。他の国ではそもそも、手足を切断した障害児はそれほど見かけません。先ほどお話したように、発展途上国で手足を欠損した障害者が多いのは、交通事故と糖尿病、そして仕事による事故が多いためです。いずれも子供にはほぼ関係なく、本来であれば子供が手足を失うケースは極めて少ないはずなんです。目が不自由な子もいましたが、傷跡が病気によるものではない。爆風とも違う火傷で、とても不自然でした。

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