5月12日。この日、自動車産業を揺るがすビッグニュースが駆け巡った。日産自動車と三菱自動車の資本提携が発表され、その日と翌日のニュースはその話題で持ちきりだった。同じ日、富士重工業も歴史的な決断を発表していた。それが、来年4月、社名を「SUBARU」へと変更するというものだ。また同時に「産業機器カンパニー」を自動車部門に統合し、開発体制を強化することも発表した。
販売好調が続く富士重工業が、なぜ今、社名や組織などを変えようとしているのか。吉永泰之社長にその狙いや経緯を聞いた。
(聞き手は 熊野信一郎)
「富士重工業」から「SUBARU」への社名変更について、社内外からどんな反応がありましたか。
吉永:5月に社名変更を発表した直後、社内でこの件についていろいろな説明をする前に、まず一部の社員を対象にアンケートをしてみたんです。その結果、(社名の変更に)「賛成」がだいたい6割で、「反対」が2割、「どちらでもない」が2割だったんですね。
いろいろな意見があるのが当然ですし、全員が賛成してほしいと思っていたわけではありません。ただ印象的だったのは、主に20代の若い人の反対が結構あったことです。

1954年東京都生まれ。77年3月成蹊大学経済学部卒業、同年4月富士重工業入社。主に国内営業と企画部門を担当する。2005年執行役員/戦略本部副本部長兼経営企画部長、2009年取締役兼専務執行役員/スバル国内営業本部長。2011年6月に社長に就任。「莫妄想」を座右の銘とし、物事の本質を素直に見て、実行することを心がけている。 (撮影:的野 弘路)
意外ですね。
吉永:意外ですよね。ひょっとすると、社名にかかわらず、変化を好まない傾向があるのかもしれません。もしそうなら、ちょっと危ないなと考えてしまいますね。これは富士重工だけの問題じゃないかもしれないんですけど。
反対の理由は何でしょうか。
吉永:あくまで私の想像ですが、20代の社員の多くは、当社の業績がよくなってから入社したわけです。だから、何も変わらないでほしいと思っているのかもしれない。
それでも、世の中はどんどん変化します。もし、変化したくない、安定を好むという考え方が広がっているのであれば、それはちょっと心配だなと。まあ、それほど深刻に考えているわけではないんですが。
「富士重工業」もしくは「Fuji Heavy Industries」がなくなるのが寂しいという声はありませんでしたか。
吉永:もちろんそれもあるんですよ。特に社内では、「富士重工」という言葉を日ごろから使っている部署の方が、やっぱり変わりたくない。例えば、共通部門なんかは一番使っているので、そうでしょう。
反対に、例えば海外関連の人たちにとっては、まったく違和感がないわけです。普段から「スバル」という名前で仕事をしているんですから。
実は個人的に恐れていたのは、航空宇宙カンパニーの反応だったんですね。ボーイングさんとの関係が深いので。ただ、ボーイングさんとのビジネスに関係する人たちと話していると、もとから「『スバルの何々さん』と呼ばれています」と言うんです。
私もつい最近、米国の防衛関係の方に「『SUBARU』と『Fuji Heavy Industries』って同じ会社なんですか?」と質問されたぐらいですから。ですから、やはりSUBARUの方が有名なんだなと思いました。
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