なるほど。亀戸天神で一日中、岩の上でぼけーと日光浴しているカメの姿を見て「なんてのんきな生き物だろう」と思っていましたが、生きる為に命がけで日光浴していたんですね。

小菅:そうです。

いずれにせよ、「小さい」「飼いやすい」「かわいい」という子供の頃のチャームポイントが大人になると一気に失われ、それがミドリガメのリリースにつながっている、と。

小菅:ミドリガメを日本の川や池に放したのは、必ずしも飼い主だけではないという説もあります。ミドリガメを縁日の商材として扱っていた方々が、その日売れ残ったカメを池などに放していた、とも言われているんです。

確かに、子供の頃は管理しやすいミドリガメとはいえ、的屋の方々も祭りから祭りへ「売れ残りを持ち歩く」となると骨が折れそうですよね。

小菅:そうかもしれません。

“寅さんのやさしさ”が裏目に出た可能性

個人的な記憶では、映画『男はつらいよ』の寅さんは的屋として、生き物は売っていなかった印象が強いのですが(第39作目『寅次郎物語』で「だから俺は生き物を飼うのは嫌なんだよ」との趣旨の台詞あり)、たとえミドリガメを扱っていても、売れ残りは江戸川に捨てていたと思います。「ミドリガメだって自然に戻るのがいいに決まってら。なあに、同じカメよ、日本にいるイシガメやクサガメとも仲良くやっていくだろうよ」とか言って。

小菅:残念ながら現実には仲良くするどころか、イシガメらを追いやってしまいました。その旺盛な食欲と強い繁殖力から、直接的かつ間接的に生態系に影響を与え、増えに増えて日本で最もよく見られるカメになったわけです。

ここまで行くと当局も動かざるを得ない、と。

小菅:2015年、環境省が輸入、販売、飼育の規制に向けプロジェクトを立ち上げました。仮に「特定外来生物」に指定されれば、カメとしてはカミツキガメ、昨年指定のハナガメに続き、3例目となります。

なるほど、ミドリガメの歴史と現状、大変よく分かりました。それでは、楽しい取材も宴もたけなわではございますが、本日もこの質問の時間がやって参りました。小菅さん、もし規制が本格化すればミドリガメの末路はどうなってしまうんでしょうか。

小菅:まず、今現在ミドリガメを飼育している人は当局に申請し許可を得なければなりません。無断で飼っていると、過去にカミツキガメを飼っていた人が外来生物法違反の疑いで書類送検された事例もありますから、これは守らねばなりません。

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