なるほど。ならば、個室に入っている人のスマホにアラートを飛ばしたらいいんじゃないですか。あなた、個室に入ってから15分超えていますよ、と。今や、社員にスマホを支給している会社も珍しくありませんから、技術的には、社員がどこにいるかを24時間、監視することもできますよね。
小浦:技術的に可能かもしれませんが、今度はプライバシーの問題が生じてしまいます。社員番号「XXXX」は今日、トータルで2時間37分21秒もトイレに入っていたと会社側に分かってしまうことは、果たして良いことでしょうか。
……そういう未来は嫌ですね。体調によっては何回もトイレに行かなきゃいけない日もあるし、そんなことは他人からやっぱり言われたくない。いわんや女性からすれば、そういうのは絶対、嫌なことでしょうね。
小浦:仰るとおりです。例えば赤外線カメラを取り付ければモノの形とか温度とかも判別できるので、トイレに入っている人がスマホを使っていることを感知することもできるでしょう。ただ、「カメラ」が設置されているトイレに入りたい人なんていませんよね。だから今は、トビラが開いているかどうかという情報しか取っていません。
トイレがIoT化するメリットはいろいろある
なるほど。今回のトイレIoTはトイレの使用実績を見える化して、データとして残すことができます。これを生かす手はないですか。
小浦:もちろんいろいろと考えています。例えば、商業施設や駅などで、本当に必要なトイレの数を決める手助けになると考えています。これまでは経験的に決めていたものを、データに基づいて必要数を割り出すことにつながるはずです。
実際、リリースを出してから、首都圏の駅ビル様から問い合わせをいただいております。そちらはトイレが充実していることが特徴の一つになっていて、トイレの空き状況を提供することを顧客サービスの一環にしたいとお考えのようです。
もっと話を広げて、行政も巻き込んでこの仕組みを社会全体に広げることはできないでしょうか。急にトイレに行きたくなったとき、スマホで近くのトイレの空き状況が分かったら素晴らしいことだと思います。私のように、頻繁に「トイレ難民」になるような人間からすると、これ以上の神アプリはないですよ。これこそIoT(モノのインターネット)ではないですか。センサーとネットが連動して人々の生活を良くする。もしこれが本当に普及したら、御社は将来、インテリジェンス ビジネスソリューションズという名前じゃなくなっているかもしれませんよ。
小浦:インテリジェンス 「トイレ」ソリューションズ、ですかね(笑)。
注:実際は、7月1日より「パーソルプロセス&テクノロジー」に社名変更
TOTOなど衛生陶器メーカーと協業することも考えられますよね。
小浦:我々は今、いろいろなところにアプローチさせていただいています。メーカー様だけでなく、ビルの管理会社様などもそうです。オフィスでトイレの空き状況が分かるというのは、今後テナントを確保する上でメリットになるかもしれません。
医学的な見地から言うと、例えば病気や事故で消化管や尿管がなくなったため、人工肛門や人工膀胱を造設した人(オストメイト)も一定数いらっしゃいます。そのような人からすると、便や尿を溜めておいた袋を洗浄できるオストメイト対応トイレが必要な時に使えないというのは、精神的にも苦痛です。例えば、10分後に、近くの「誰でもトイレ」を予約する仕組みとか作れないでしょうか。
小浦:関係機関と調整は必要になるでしょうが、技術的には可能だと思います。弊社でも利用者にアンケートを取ってみたのですが、「スマホでトイレの予約ができたら良い」という意見は結構ありました。
近い将来、自分の近くにあるトイレをスマホで見られるようなシステムができたとして、障害がある方が優先して予約できる仕組みがあったら良いですよね。障害者と認定されている人だけ公衆トイレを優先的に予約できるコードが払い出されて、それを入れると予約できる仕組みにする。それって、障害者の方々にも優しい環境と言えると思います。
夢が広がりますね。
小浦:トイレって、語り出すといくらでも話が盛り上がるんですよ。
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