離脱派は、EUから離脱した後、市場の一体性を保つ新たな協定を結ぼうと考えているようですが。
伊藤:例えばノルウェーは、EUとの間でEEA(欧州経済領域)という協定を結び、EUに加盟しないまま、その単一市場には参加できるようにしています。ですが、それと同じ事を英国に認めるかというと、難しいでしょう。ノルウェーは、離脱派が批判したEU移民を受け入れ、EU財政への拠出もしています。
英国にとっては、これらの義務を負わない広範なFTA(自由貿易協定)の締結が望ましい。しかし、離脱後の英国に有利な条件のFTAを締結することは、他のEU加盟国の離脱の動きを加速させることになりかねませんからとても難しいはずです。
ということは、今後英国に新規投資をするのはしばらく躊躇する企業がでてくるかもしれません。様子を見ながらでしょうが。ロンドンの金融業も移転する可能性はありますが、フランクフルトやパリにすぐいくかというと、労働規制や言語の問題もあり、これも様子を見ながらかもしれません。同じ英語圏でビジネス環境の良好なアイルランドはありえますが…。
製造業は、例えば自動車などはEUへの輸出には10%の関税がかかるようになりますから、その環境が続くと影響はありますね。
ユーロ圏景気の失速はない
EUのユーロ圏への影響はどうでしょう。
伊藤:EUの域内人口は、約3億3000万人で、加盟国は19カ国もあります。英国との経済関係は濃淡があり、影響度もさまざまです。アイルランドは経済関係も強いので影響はあるでしょうが、先ほどお話ししたようなプラス面もあるのでネガティブにだけは捉えにくいと思います。マクロ的に見れば、ユーロ圏の景気が失速するということはないと思っています。
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