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――なるほど。

斗鬼:ちなみに、右と左のどちらに立つかは国や地域で異なり、米、英、仏、中、韓、大阪は右に立って左を空けますが、オーストラリアやシンガポールは東京同様、左に立って右を空けます。

 この現象を理解するには、“当局や鉄道会社などの要請ではなく自然発生的に「片側空け」が定着した場合、どちらを空けるかはその国の交通ルールに准ずる”と考えると分かりやすいと思います。

なるほど。東京は「自然発生的」だから、交通ルールと同じになる。日本は左が走行車線で右が追越車線なので、エスカレーターでも左に立つ(右を“追越車線”として空ける)わけですか。いずれにせよ、片側空けが、“効率的で紳士的な仕組み”として普及しているグローバルルールであることは間違いない、というわけですね。

斗鬼:大都市に限定すれば、そういう言い方をしてもいいでしょう。

では先生、話はここからです。冒頭にも言いましたが、この効率的かつ紳士的かつグローバルな片側空けに異を唱える人が最近、増えていると聞きます。彼らがそう主張する根拠は「危ないから」で、「エスカレーターは片側に立つように設計されてない(だから片側空けは危険)」といった専門家の声もよくメディアに掲載されます。片側空けは本当にそこまで危ない行為なのでしょうか。

「片側空け廃止」が逆に事故につながる可能性

斗鬼:片側空けというルール、それ自体がエスカレーターの運行に深刻な支障を与えるといったことはないと思います。片方だけに重心がかかる結果、陥没したりして大きな事故につながった事例は、少なくとも私個人は聞いたことはありません。

片側だけ部品の消耗が早くなったりしても、定期検査で早期発見して交換すればいいだけですよね。エスカレーターの寿命は縮まるかもしれませんが。

斗鬼:片側空けに反対している人が主張しているのは、機械の故障や破損というより、片側で止まっている人に片側を歩いている人がぶつかる危険性だと思います。転んだり、荷物を落としたりしてそれが別の人にぶつかる事故ですね。

 あまり報道されてはいませんが、エスカレーターでの転倒や接触などで怪我をする人は年々増えていて、2014年には東京消防庁管内だけで1443人がエスカレーター事故で救急搬送されました。

ただ、安全性の面を言うなら、今、片側空けを廃止してしまえば、例えばラッシュ時に多くの人が降りる都心のターミナル駅では、人がホームに溢れ、線路への転落が起きかねないという声も聞きます。