朝生:子供を持つ人も持たない人も、お互いに「羨ましいな」とか「大変そうだな」と思うこともあるし、お互いに「自分の人生はこれでいいのか」と不安にも思う。でも人間はそれぞれの人生を引き受けて生きていくしかない。お互いの生き方を対立構造で語っても不毛です。

ただ、お話を聞く限り、前者には世間という味方がついていますが、後者にはそれはありません。子供を持つ人は、悩んでも「これが当たり前」「世間もそう言っている」と自分を納得させられるかもしれない。でも、子供がいない人はそうは行かない。「子供がいないのは不幸」という価値観の中で、いつまでも自分の人生を肯定できない状態になりかねません。ここで、本題です。果たして子供がいない人生は本当に不幸で、悲惨な末路が待ち受けているのでしょうか。

子供の有無で人生の幸福度は変わらない

朝生:米国のものですが、「子どもの有無で幸福度に差はない」という調査結果があります。米プリンストン大学とストーニーブルック大学の研究チームが「子供のいる夫婦といない夫婦の幸福度はどちらが高いか」について研究したもので、2008年から2012年にギャラップ社実施の約180万人を対象とした調査を元にしています。さらに、英オープン大学が約5000人を対象に実施した調査では、夫婦関係への満足度は、いない夫婦の方がいる夫婦より高い結果となったとのことです。

場合によっては、むしろ子供がいないほうがいい、と。「子はかすがい」のはずなのに何故そんなことに。

朝生:プリンストン大学では、子供を持つ夫婦の方が浮き沈みを経験しがちだからと分析しています。つまり楽しいこともあるけど、辛いことも多い、と。

それって、子供というものは結局、親の思い通りには育たないからではないですか。最新の発達心理学などでは、「子供がどんな人格に育ちどんな才能を育むかは、『遺伝』と『幼少期からの友人関係』で決まり、子育て自体は意味がない」という見方もある、と聞きます。だとすれば「理想の教育」を生き甲斐にしている人は、逆に子育てが強烈なストレスになりかねません。

朝生:そうかもしれません。自分の期待に対する子供の達成度合いで幸せかどうかが決まるとすれば、子供の育ち方によって幸福感の振幅は大きくなるでしょうね。