昨年発覚した東洋ゴム工業の性能データ改ざんや東芝の不正会計、そして三菱自動車の燃費データの不正と、企業不祥事が絶えない。三菱自動車は2000年、2004年のリコール隠しに続く3度目の不祥事発覚だ。
なぜ企業不祥事がやまず、再発防止策も機能しないのか。リスク管理の観点から企業不祥事を数多く研究してきた警察大学校の樋口晴彦教授に聞いた。(聞き手は西頭 恒明)
樋口先生はリスク管理の観点から、東洋ゴム工業の性能データ改ざんや東芝の不正会計など、様々な企業不祥事を研究されてきました。今回発覚した三菱自動車の燃費データ不正事件をどのように見ていますか。

警察大学校警察政策研究センター教授。1961年、広島県生まれ。東京大学経済学部卒業後、上級職として警察庁に勤務。現在、警察大学校教授として、危機管理・リスク管理分野を担当。企業不祥事研究の第一人者。米国ダートマス大学MBA、博士(政策研究)。近著に『なぜ、企業は不祥事を繰り返すのか』(日刊工業新聞社)、『悪魔は細部に宿る ―危機管理の落とし穴』(祥伝社)など。
樋口:検査関連の偽装という点で東洋ゴム工業の不正事件とよく似ています。不正が生じた原因も共通しています。1つは、技術力が要求されたレベルにまで達していなかったこと。それから、経営陣や上司による厳しいプレッシャーがあったことです。
ただ、こうした原因による不正はこの2社だけではなく、どの企業にも起こり得るものです。東洋ゴムや三菱自動車のケースは影響が極めて大きいために重大な不正だと騒がれていますが、決して特殊な会社で特別の事情があって発生したものではありません。
確かに三菱自動車だけでなく、スズキでも燃費測定で不正があったことが発覚しています。昨年明らかになった東芝の不正会計では、まさにトップをはじめとする上司からのプレッシャーが不正につながっていました。
樋口:そもそも経営者が自社の技術力の限界を知らないか、知っていてもリソースを投じようとせずに、現場に「頑張ればこのくらいできるだろう」「何とかしろ」と指示することに問題があります。
日本の企業では上からの指示に対して、「それはできません」とはなかなか言えません。「これだけのリソースがあれば」という提案ですら、言い訳のように受け取られがちです。そのため、「どうやってでも結果を出さなければ」と関係者が思い詰めてしまうわけです。だからこそ、ある特別な会社の話ではなく、どの企業でもこうした不正は起こり得るのです。
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