言い換えれば、“イチロー級”が出てこなければ、日本は沈んでいく一方だと思います。今、ものづくりの世界は、ハードからソフトへとシフトしています。自動車のような製造業の代表ともいえる業種でも、IT企業のグーグルが自動運転の自動車をつくるような時代になっている。自動運転、AI、ロボットなどといった技術が今、話題になっていますが、未知の新しいソフト産業も生まれてくるでしょう。ITエンジニアの人材が育ってこないと、日本の国力は低下していく一方です。
教える方の人材も必要ですね。
水野:重要な課題ですよね。新しい技術が常に入ってきますから、学校の先生方がキャッチアップするのは簡単ではない。そんなこともあって、我々の会社では指導する学校の先生向けの教材動画「TECH for TEACHERS 情報の先生のための授業支援プログラム」をつくって、ネット上で無料公開しています。
とはいえ、教える人材の問題は社会全体で取り組むべき課題であると思います。仕組みづくりは国にも力を入れてもらわないとならないでしょう。
シニアやミドル世代もプログラミングを学ぶべし
シニアやミドル世代は取り残されるわけですが…。40歳、50歳になったら、プログラミングを学ぶにはもう遅いのでしょうか。
水野:そんなことはないです。何歳からでも学ぶことができます。iPhoneアプリなら1カ月くらい頑張れば一本つくることができますよ。大人が学んだ方が、日本のプログラミング人口のすそ野はスピーディーに拡大できるはず。
親子で学ぶなんていうのも素敵ですよね。iPhoneアプリなら「Swift」、アンドロイドなら「Java」、そのあたりからがよいのでは。プログラミングを学ぶと世界が変わること請け合いです。
イチローになれませんよね、大人は。
水野:それはわからないですよ(笑)。大人は知識と経験が豊富ですから、アイデアはたくさん出てくるはず。自分の専門分野とプログラミング、その両者の「掛け算」で新規事業立ち上げなんて可能性もあります。アップル社の共同創業者のスティーブ・ジョブズに「点と点をつなぐ(Connecting the dot)」(注2)という有名な話がありますが、まさにそういう形で専門分野の知識・経験とプログラミングが結びつき、新しいものを生み出すことができれば理想的です。
アップル社の創業者、スティーブ・ジョブズが、2005年のスタンフォード大学の卒業式で行ったとても有名なスピーチから。中退した大学で学んだ「タイポグラフィー」の知識が、後に同社のパソコン「マッキントッシュ」の美しいフォントに結び付いたというエピソード。
「ハングリーであれ。愚か者であれ」 ジョブズ氏スピーチ全訳(日経電子版)」
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