70歳代から稼ぐ力が低下

社長がいつまでも交代せず、高齢化が進んでいくのは、根深い要因があるのですね。では社長の高齢化と業績の相関関係はありますか。

箕輪:2014年の前回調査のときですが、企業の稼ぐ力が社長の年齢とどう相関しているのかというのを分析しました。キャッシュを生む能力は、30歳代、40代、50代、60代と社長の年齢が上がるにつれて、どんどん高まっていくのですが、70歳代になると、急にがくっと落ちるのです。また、「後継者不在」という企業に限ってみると、全年代で「後継者あり」という企業よりも稼ぐ力が弱いのですが、こちらも70歳代からの落ち込みが顕著です。60代を過ぎると、業績にも深刻な影響を与えると、みています。

どんな理由が考えられますか。

箕輪:当然、60代を過ぎた社長がこれから30年間のビジョンを描けるかというと、かなり難しいと思います。中長期的なスパンでの経営計画というのは立てにくいでしょう。それと創業社長の成功体験は、今の世の中の成功事例とは、おそらくずれているのだと思います。

企業の力が弱まるのが明確なのに、高齢化が止まらず、後継者もなかなかいないとなると、日本経済にとっても大きな問題ですね。

箕輪:今後の円高・株安の観測が強まっていて、アベノミクスの失速が懸念されるなかで、日本経済の成長にとっては、圧倒的な数の中小企業も含めて、個別企業が力を発揮していくことが不可欠ですよね。その意味で、社長の高齢化や後継者難は、かなりゆゆしき事態だと考えています。

 事業承継というのは、社長さんが負っている義務の1つだと思っています。会社っていろいろな人のためにというのがありますけれども、当然、社会とか経済のためにというのも1つあるわけで、事業承継が遅れて業績が悪くなるということは、結果的には経済を停滞させる。そういう責任も社長は負っているということをある程度理解していないといけないのかなと思います。

今回の実態調査で、後継者の属性を分析すると、同族以外の人が増えているそうですね。

箕輪:もちろん最も多いのは「子供」で構成比は38.6%です。2011年の前々回調査で16.8%を占めていた配偶者は8.9%へと半減しました。代わって「非同族」が前々回調査から5.8ポイント上昇して、32.4%になりました。後継候補の3人に1人は同族外の人物が選ばれているわけです。

 ここにきて同族以外にも選択肢が広がってきているのですね。制度的な後押しもあります。事業承継税制が改定され、相続税や贈与税の支払い優遇制度が、親族以外に承継する場合も対象となりました。

非同族の「よそ者」が新たな風

非同族の後継というと、例えば社内の従業員からの内部昇格ですか。

箕輪:それもあるでしょうし社外からの起用も広がっている印象はあります。社外からの招聘といっても企業再編に伴うものがあります。例えば今、倒産が減っている理由のひとつには、法的手続きではない、会社の整理の仕方が増えている面もあるでしょう。苦しくなった会社のいい部分を新会社に移して存続させるというような手法です。会社の再生の手法が多様になるなかで、支援してくれる企業から経営者候補を入れるといった例が増えているという背景があるのだと思います。

 もともと経営者には自分でつくった会社を、人に渡すことには抵抗感があるでしょう。しかし同族でない「よそ者」の存在が、新しい風を会社に吹き込むことが重要になってくる可能性もあります。要はダイバーシティーということだと思います。もちろん非同族の後継者には、株式の買い取りや債務保証能力、取引先との信頼感の熟成や社内の求心力など課題も多いですが、そこに固執しすぎてしまうと、後継者難の現状は変わらないのです。

コーポ―レートガバナンスを強化する政府の方針もあって、上場している企業に対しては、社外取締役などの機能を強化して、社長の選任に外部の目を入れようという流れはあります。それでも、社長個人が交代の時期や自分の後任を決めたいという意識はなかなか変わらず、社長の高齢化も続きそうです。上場していない中小企業であっても後任選びに社長以外のひとが関与する仕組みは必要ではないですか。

箕輪:そうですね。確かにそれは結構大事だと私も思います。現状では「外圧」がないという面はあるでしょう。しかし そこを誰が担うのかは、難しいところだと思います。ただ少なくとも政府は銀行にそれを求めていますよね。金融機関のコンサルティング能力を高めろというのが、金融庁から各地銀に下りているお達しなのです。不良債権をなくせというのじゃなくて、不良債権を回収するために企業に寄り添いなさいというようなことです。銀行として、このまま社長が経営を続けていて、融資の回収ができないのでは意味がないというときに、さっき言ったように新会社方式など何らかの形で企業を存続させて、ある程度は債権カットするけれど、残った部分で少しでも回収していくという手法も、多分これから増えてくるとは思うんですよね。

家業を継ぎたくないという二代目の意識は、あまり変わりそうにないでしょうか。

箕輪:面白い取り組みとしては、関西学院大学が、実家が事業を営む学生を対象にしたゼミをやっているんですよ。会社を継ぐこととはどういうことかを考えるためです。私は、新しい世代から親に向かって突き上げというようなことが出てくると、もうちょっと面白いのかなと思うんですよ。子供が継ぐことのネガティブな側面が強調されがちですが、2代目というのは、資産などをもっているわけで、早い段階で、ばくちが1つ打てますよね。

 今は社長に子供がいても、いきなり自分の会社には入れないことが多いんじゃないですか。でも大手企業など外の会社で働き出すと結局、家業には戻ってこないことも少なくないようです。ですが、関西学院大学での取り組みのように、2代目を後押しする力があると、少しは局面も変わってくるのではと思います。