たとえ後継ぎになり得る、息子がいてもですか。

箕輪:息子がいる以上は、いずれはと思うのかもしれませんけれども、いわゆる承継準備というのが必要なわけです。経営者がそのステップをきちんと踏んでいる企業がどれだけあるかといったら、なかなか少ないと思うんですね。

箕輪さんが実際に目にした例はありますか。

箕輪:継がせてもらえないという2代目の例はよく聞きました。例えば2代目は、経営幹部なんですが「俺はこうやりたいのに」と言っても、やらせてもらえないという企業がありましたね。データを使って取引先のいい悪いを数値化し、伸びるところを探していきたいのだけど、父親である社長が許さないという。父親には経営の勘に対する自負や、取引先との付き合いへの思いなどが、あるみたいなんです。でもだんだんと事業の環境は変わってきているはずで、もしかすると、取引先の方から切られることだってあるわけです。その話を聞いたとき、状況を冷静にみられる、若い人の感性は必要なんだろうなと、私は思いました。

リーマンショックで社長の信用力が低下

社長が高齢化しても昔の成功体験にとらわれて「まだまだできるはずだ」と思ってしまうわけですね。大企業でも、同じように高齢社長の長期政権になっている例は数多くありますね。

箕輪:中小企業の場合は、2008年のリーマンショックで景気がぐっと落ちたときに苦しくなりましたが、そこで会社を手放さずに頑張ったのです。結果として、後継者を育てたり事業承継の準備したりするといった手を打つのが遅れているのだと思います。

 もう1つ現実問題として、基本的に中小企業では、会社の信用というものは社長個人に付いています。借り入れの保証も基本的には社長に付く形なので、子供に継がせるにしても、その信用力を子供に持たせなきゃいけないわけですよね。

後継者に信用力を持たせるというのは、どういうことですか。銀行借り入れの担保となるような資産を持たせるということですか。

箕輪:そうですね。例えば株の継承であるとか、不動産などの資産を移す。そういう、目に見えるものだけではなく、従業員に対する求心力や取引先との信頼関係なども含まれます。中小企業では、社長の信用力によって、お金も仕事も人も、全部が集まってくるのが特徴です。それを後継者にいかに伝えるかというのが、事業承継のポイントなのですが、うまく進んでこなかった。

 背景としてやはりリーマンショックが起きたことは影響しています。環境が悪くなり、そもそも社長がもっている信用力が軒並み低下してしまったのです。そうするとその低下した信用をそのまま後継者に渡すというのはなかなか難しいのです。例えば、継ぐ人はいるけど、いま社長にしても、銀行は追加融資はくれないだろうなと思うこともあったでしょう。

日本の銀行の融資の仕方は昔から、経営者の個人資産を担保に取ることが多いですね。日本の企業の社長が高齢化するのは、そうした金融の仕組みの影響も大きいのでしょうか。

箕輪:大きいと思います。銀行にとっても融資先の業績が悪化して、不良債権になるのが怖いので、当然ながら簡単に、別の人間に信用を付け替えるということはできないでしょう。だから、事業承継というのは「来年、会社を辞める。じゃあ、お前、後継者。あとは頼むな」というわけにはいかないのです。本当は、何年もかかるものなのですが、そのプロセスがリーマンショックなどの影響で、すっ飛んでしまっているのかなという印象ですね。

しかしリーマンショックの後に、中小企業金融円滑化法ができました。法律は2013年3月で終了しましたが、法律の趣旨は今も継続しており、中小企業の資金繰りは楽になっているはずですが。

箕輪:確かに倒産は激減しました。ただ貸付条件の変更などに金融機関が応じているといっても、それは会社の信用力が高まったわけではなく、銀行がお上から言われて返済を待ってあげているようなものです。だから事業継承の問題に対しては、根本的な解決にはなっていないと思います。事業が苦しい状況で、貸付条件の変更などをしている企業が、後継者に経営を譲ろうとするときに、果たして銀行などがどこまで面倒をみてくれるかというのも、事業継承問題のひとつのポイントであるとは思います。