日本の企業で社長の高齢化が止まらない。帝国データバンクによると1990年の調査開始以来、社長の平均年齢は上昇し続け、直近調査では59.2歳となった。社長が70歳を超えると企業の稼ぐ力が目に見えて低下することも明らかになった。円高や株安などで景気の先行き不安が強まる中で、経済の原動力である企業の活力までが失われるのは、日本にとって致命的な弱点となる。国内企業の66%は社長の「後継者がいない」という背景には「まだまだ俺が経営できる」と考える高齢社長の思い込みや、社長個人の信用力に対して融資する日本の銀行の伝統など、根深い事情がある。帝国データバンク東京支社情報部の箕輪陽介氏に聞いた。

(聞き手は鈴木哲也)

社長60歳以上でも半数は後継者不在

2016年の「後継者問題に関する企業の実態調査」の結果はどのようなものでしたか。

箕輪 陽介(みのわ・ようすけ)
帝国データバンク東京支社 情報部情報取材編集課。2010年3月東洋大学大学院博士(文学)前期過程修了、同年4月帝国データバンク産業調査部情報企画課、2011年10月より企業倒産を専門に扱う現職に異動。企業の信用情報をはじめ、年数百件の企業倒産を取材・調査する傍ら、中小企業の経営実態および倒産動向の分析に携わる。主なレポートに「後継者問題に関する企業の実態調査」、「全国オーナー企業分析」、「原発関連企業の実態調査」など。

箕輪:全国の28万9937社を対象にした調査です。企業の3分の2にあたる66.1%が後継者不在で、2014年の前回調査から0.7ポイント上昇しました。社長が60歳以上の企業をみても、50%が後継者不在です。社長が70歳代の企業でも、4割強はいまだに後継者が決まっていないのです。

一方で当社の「2016年社長分析」という調査では、全国の企業の社長の平均年齢は59.2歳と過去最高で、一貫して上昇しています。社長の高齢化がますます顕著になる中で、事業継承の問題についても分析する必要があるという問題意識があったのですが、改めて、後継者問題が日本の企業の重要な課題であるということが、浮き彫りになっています。

これだけ後継者がいないというのは、どういう訳なんでしょうか。

箕輪:昔と比べて、やっぱり企業を取り巻く環境が大きく変わっているというところが一番大きいかなと思います。調査の対象は数では中小企業が多いのですが、昔であれば、当然親の仕事は子が継ぐものという慣習がありましたが、子供の意識が変わっていますよね。特にこの10年ぐらいは、親が経営に苦労するのをみてきて、継ぎたくないという子供がおそらく増えてきているのではないでしょうか。

俺はまだできる、息子には任せられない

 それからあとは、今、社長をやっている人は、日本の高度成長期から、その後の1980年代のバブル期を通じて、会社を立ち上げたり事業を大きくしてきた経験がある人が多い。比較的、成功体験をもっているということが関係していると思います。

それは、どういうことですか。

箕輪:その当時の成功体験によって、現在の厳しい経済の環境を乗り切れるのかというと、そうでもないでしょう。しかし社長自身に成功体験が強く残っていて「自分がこうしたらうまくいくはずだ」という、発想をもっているので、なかなか後継者をつくって会社を継続させていくという気持ちに切り替わらない。特に創業社長には、その傾向が強いと思います。実際、調査をする中で、社長から「やっぱりまだ任せられない」という声は複数聞きました。

そもそも、後継者をつくっていこうという、気持ちがあまりなんでしょうかね。

箕輪:そちらにあまり気がいかないんだと思うんですね。皆さん、がむしゃらにやってこられた方々だと思うので、あまり後継者とか、会社を長く存続させる、いわゆる「ゴーイングコンサーン」と呼ばれるものへの意識って、中小企業に関しては実際はあんまりなかったんじゃないかなというのが、私の考えですね。