だからこそタックスヘイブンは、手数料と引き換えに、唯一の主要な資産である「主権」を使って非課税特区のような空間を構築し、企業や個人を集めている。この特権こそが、彼らにとって唯一、世界の消費者を惹きつける商品であり、これによってグローバル世界で生き残ろうとしている。
今後も、節税したいというニーズがある限り、その需要にこたえようとする国は存在し続けると。
パラン:残念ながら、それは事実だ。ここ数年で、タックスヘイブンのトレンドは大きく変化している。パナマやケイマン諸島など伝統的なタックスヘイブンから、今はシンガポールやドバイ、バーレーン、香港が新たなタックスヘイブンとして存在感を高めている。
タックスヘイブンは国際ビジネスに不可欠な仕組み
こうした動きの背景には経済活動の中心が欧米からアジアに移っててきていることがあるが、もう1つは彼らもまた「特権」が商品になると認識していることだ。やっかいなことに、これらの国では、欧米が圧力をかけても、なかなか動かない。OECDといった西洋が主導するルールを、これらの国がどれだけ順守するかは、正直わからない。ここでも私は国際協調の限界を感じている。
理解していただきたいのは、タックスヘイブンは世界経済の末端で起きている遠い出来事ではなく、現代のビジネスに不可欠なシステムとして組み込まれているということだ。タックスヘイブンは国家の規制の抜け穴のように見えるが、決して対立する存在ではなく、ある国にとっては調和的に存在している。

タックスヘイブンに流れ込んでいる資金の総額は、正直、推測するのは難しい。OECDによれば、多国籍企業がタックスヘイブンなどを利用した節税策によって課税を逃れている法人税収は全世界で年1000億~2400億ドル(約10兆8000億円~25兆9000億円)に達するという。
もはやタックスヘイブンは、金融の世界、組織、国、個人の財源を管理するビジネスに組み込まれている。これを切り離すのは、簡単ではない。
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