カラー革命とアラブの春の背景にあったもの

米国の状況についてうかがいます。内向き志向がどんどん強まっているように見えます。オバマ大統領は2013年9月に「米国は世界の警察官ではない」と明言しました 。次期大統領を目指して予備選を戦う候補者たちも、格差を中心とする内政にその興味が向いています。TPP(環太平洋経済連携協定)やTTIP(環大西洋貿易投資協定)などのメガ自由貿易協定にもネガティブな姿勢を示しています。

茂木:おっしゃる通りですね。米国が内向きになった理由はイラク戦争とリーマンショックの二つです。イラク戦争が長引いたため、厭戦気分が広まりました。「なぜ中東で、米国の若者が命を落とさなければならないのか」という声が高まっています。

 リーマンショックは貧富の格差を拡大させました。奨学金を返済できずに苦しんでいる人がたくさんいます。ここに、共和党のトランプ氏や民主党のサンダース氏が大統領候補として躍進してきた理由があります。

 米国が力を落としたのにつけ込んで、ロシアはウクライナに、中国は南シナ海に触手を伸ばしました。

アラブの春も米国の衰退が原因でしょうか。

茂木:アラブの春は様相が異なります。これはソ連の崩壊を受けて米国が中東の親ロシア政権を倒す運動の一環でした。

 アラブの春で倒れたのは、エジプトのムバラク、チュニジアのベン・アリ、リビアのカダフィの各政権です。いずれも親ソ派でした。これらの国は冷戦終結を受けて米国にすり寄る姿勢を見せましたが、米国は面従腹背と見て信用しませんでした。

 アラブの親ロ政権が倒される中で、唯一、政権を維持しているのがシリアのアサド政権です。ロシアが軍事介入に踏み切ったのはそれゆえです。ロシア海軍がシリアのタルトス港を拠点として利用しているのも理由の一つです 。

 アラブの春に先立って、ジョージア(グルジア)でバラ革命が、ウクライナでオレンジ革命が起こりました。これは旧ソ連諸国における親ロ政権を倒したものです。スポンサーは例のジョージ・ソロスの財団でした。アラブの春はこれを中東に応用したものです。

独裁政権が倒れるのは、アイデアリズムの視点から見れば好ましいことですが、その結果起きたのは混乱でした。

茂木:中東には「どんな独裁であっても混乱よりはましだ」ということわざがあります。

なんとも皮肉なことわざですね。

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