セキュリティー・コーディネーターの育成
さらに、セキュリティー・コーディネーターの育成とデフェンス・サイエンス・ボードなどの設置が考えられます。セキュリティー・コーディネーターは防衛装備を移転する対象となる外国の事情を熟知する人材です。
- ある防衛装備を移転することで、その国のどんな問題を解決することができるか
- 対象となる防衛装備を運用できる人材がその国にいるか
- メンテナンスをする体制はあるか
- 資金はあるか
- 経済状況は良好か
セキュリティー・コーディネーターのような人材が日本にいれば、オーストラリアの潜水艦の商談において、現地生産のニーズをもっと早くに捉えることができたでしょう。米国などでは、元軍人がこの役割を果たしています。
米海軍で働く私の友人は「退役したら、防衛企業のアドバイザーになる」と話していました。セキュリティー・コーディネーターになることを想定していたのかもしれません。
しかし、多くの自衛隊員はこれまで、防衛装備を海外に移転するという視点を持つことなく仕事をしてきたと思います。セキュリティー・コーディネーターを育成するには時間がかかりそうですね。日本ではビジネスコンサルタントがその役割を果たすかもしれません。
佐藤:そうですね。
米国ではデフェンス・サイエンス・ボードやディフェンス・ビジネス・ボードを政府内に設置しています。国防総省や国務省の官僚と米ロッキード・マーチンのような防衛企業の担当者が集まり、防衛技術開発のトレンドを評価したり、どの防衛装備をどの国に対してなら提供できるか、どのような具体的案件があるか、などを話し合ったりする“司令塔”です。セキュリティー・コーディネーターは集めた情報をこのボードに提供します。
米国のエキスパートの働き方はとても柔軟です。政府と大学、企業とシンクタンクなどを行ったり来たりしながら力を付けていきます。こうした働く仕組みが、デフェンス・サイエンス・ボードやディフェンス・ビジネス・ボードを現実に機能する存在にしているでしょう。
もう一つ考えられるのは、技術を持った中小企業を集めてコンソーシアムを作るブローカー的な人材を育てることです。防衛装備は艦艇や戦車ばかりではありません。例えばドローンなどが重要度を高めています。そして、ドローンに関わる技術は、これまでの防衛産業の中心をなしてきた大企業だけでなく中小企業でも開発することができます。中小企業が保有するシーズ技術を掘り起こし、集め、防衛装備に組み上げるブローカーが大事な役割を果たすようになるでしょう。
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