防衛装備移転三原則だけで産業育成はできない

防衛装備移転三原則が閣議決定されても、状況が短期間のうちに大きく変わることはないようですね。同三原則には、将来が懸念される日本の防衛産業を維持する効果はないのでしょうか。

佐藤:同三原則は単独で防衛産業の維持を図るものではありません。防衛産業の維持・拡大を直接の目的としている施策は防衛生産・技術基盤戦略です。同戦略は、防衛装備移転三原則を柱の一つとして位置づけています。

だとすると、防衛装備移転三原則は何のためにつくった原則なのか、よく分からないですね。

 この新三原則が閣議決定された2015年4月に次のお話しをうかがいました。

  • 防衛装備の移転を経済行為ととらえ、ここから利益を上げることを認めていない
  • 外交のツールとして防衛装備を利用することは認めていない
    (関連記事「防衛装備移転三原則は絶妙のバランス」)

 「外交ツールとしての利用」いうのは、例えば、こんな具合です。日本企業が作った部品を使用する装備品を調達した国は、日本製部品を安定的に入手できる環境を維持したいので、日本との関係を安定的なものにしようとする。

佐藤:防衛装備を巡る安倍政権の姿勢は非常に抑制的なもので、「防衛装備の海外移転をアベノミクスの第4の柱にする(経済振興策にする)」といった見方は当たっていないと思います。

 防衛装備移転三原則はこれを最終形にすべきではないでしょう。世界の防衛装備の取引を見ると、外交ツールとしての性格が必ず伴います。日本も同様の生かし方を考える必要があるでしょう。

 ただ、その実現は容易ではない。ある防衛装備をある外国に提供することが、関係強化につながるかどうかを客観的に評価することはできないからです。サウジアラビアは、米国から大量の武器を購入しているにもかかわらず、米国の思い通りにはなりません。

抑止力の議論と同じですね。効果があるとは思うけれど、誰も証明できない。

佐藤:その通りですね。

日本版FMSの作成を求める声

日本の防衛産業を維持するための施策を考えると、どんな手法が考えられるでしょうか。

佐藤:先ほど申し上げた国際市場のカタログに載るようにすることが一つ。

 加えて、防衛企業の中には日本版FMS(Foreign Military Sales)を作るよう求める声があります。

FMSとは、どういうものですか。

佐藤:米国政府が作った、防衛装備の取引に関する契約形態です。この形態では、政府と政府が国際売買契約の主体になります。例えば純国産の10式戦車をある外国に販売するとしましょう。FMSでは、日本政府が三菱重工業から10式戦車を買い取り、それを外国政府に販売する形を取ります。三菱重工にとって売り先は日本政府なのでリスクはありません。

 しかし私は日本版FMSにはあまり賛成しません。まず日本政府にお金の負担がかかります。輸出する装備をメーカーからいったん買い取る資金が必要になるので。次にビジネスのダイナミズムをどのように担保するかも考慮する必要があります。防衛装備とは言えモノを売るわけですから、何が売れるかの目利き力が問われます。防衛省も外務省も、また経済産業省も、少なくとも現時点では防衛ビジネスに精通した人材を確保していないように思います。

 これに近いスキームを実現するならば防衛省や経済産業省といった中央官庁よりもJETRO(日本貿易振興機構)やJICA(国際協力機構)のような組織のほうが適しているかもしれません。