日銀の追加緩和は一時的な効果しかもたらさない

その動きが変わることはないのでしょうか。FRBが再び、タカ派色を強め、利上げを積極化する可能性はありませんか。

唐鎌:FRBについては、多分変わらないと思いますね。つまり、利上げを慎重に進める方向からは容易には変わらないでしょう。

 一方で日銀の黒田東彦総裁は、4月15日に米国で開かれた20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議の後、「為替市場を含めて市場を十分注視し、2%の物価目標達成にマイナスになることがあればちゅうちょなく追加的な措置をとる」と明言しました。緩和は行うのでしょうが、効き目があるかどうかは別だと思います。

 先ほどもお話ししたように、米経済がドル高を受け入れにくくなっているのだとすれば、日本が円を低めに誘導する措置をとっても対症療法にすぎないからです。これは日本だけではありません。欧州もECB(欧州中央銀行)が3月10日、追加緩和に踏み込んだにも関わらずユーロ高は進んでいます。

円高が定着すると、企業業績への影響は避けられないかと思います。日本経済は打撃を受けるのでしょうか。

唐鎌:確かに製造業の増益幅は縮小するでしょう。しかし、1ドル95~100円になったからといって、日本経済が大きな打撃を受けるかというと、そんなことはない。

 少し前まで1ドル120円を超える円安になった時に、産業界や政治家からは、円安によるコスト増を不安視する声が聞かれました。今春の賃上げが抑えられたのも、これ以上のコスト増を避けたいという思いがあったはずです。

 なにより、通貨の実力を示す実質実効為替レートでは円は1970年代並みの水準にあります。過度の円高ということではありません。しかも、原油価格は、アベノミクスの始まった2013年の半分に落ちています。円高で原油価格も下落しているということは、交易条件(輸出商品と輸入商品の交換比率)の改善を意味します。本来は収益環境は良くなっているはずです。

 今の円高を不安視する必要はないと思いますね。