1ドル120円を超えていた円安が4月に入って一変した。急速に円高が進み、一時107円台にも達した。円高の背景には米経済への懸念がある。
 みずほ銀行のチーフマーケット・エコノミスト、唐鎌大輔氏は「今後1年で1ドル100円もあり得る」と指摘する。
 円相場の先行きと日本経済への影響を唐鎌氏に聞いた。

(聞き手は田村 賢司)

4月に入って急速な円高が進みました。米国の利上げが難しくなり、ドル高が限界に来たと見えてきたのが原因でしょうか。

唐鎌:円高が急速に進み始めたのは、米連邦準備制度理事会(FRB)が4月6日に、3月15~16日に開いた米連邦公開市場委員会(FOMC)の議事要旨を公表した辺りからです。そのFOMCでは、世界経済の下振れリスクを懸念して「慎重に政策を調整する」という意見が多かった。結局、FRBは利上げに自信を失ったと市場は判断し、円買いに転じたのではないでしょうか。

米国の景気拡大は既に史上4番目の長さ

これまでFRBは2016年に年4回の利上げを想定してきました。それに対して市場は既に懐疑的だったはず。何が変わったのですか。

唐鎌 大輔(からかま・だいすけ)氏
みずほ銀行 チーフマーケット・エコノミスト
2004年、慶応義塾大学経済学部卒業後、JETRO(日本貿易振興機構)入構、貿易投資白書の執筆などを務める。2006年、日本経済研究センターへ出向し、日本経済の短期予測などを担当。2007年、欧州委員会経済金融総局(ベルギー)に出向。2008年10月、みずほコーポレート銀行(現・みずほ銀行)入行。国際為替部で為替分析を担当している。著書に『欧州リスク 日本化・円化・日銀化』(東洋経済新報社、2014年7月)などがある(写真:柚木裕司)。

唐鎌:米国経済の勢いは明らかに落ちています。米商務省が4月13日に発表した3月の全国小売売上高は、市場の事前の予想は「増加」でしたが、ふたを開けると「減少」となりました。特に米国の消費の中核である自動車について見ると、サブプライムローン(信用力の低い層向け貸し付け)は昨年8月、プライムローン(信用力の高い層向け貸し付け)は同10月から既に、ローン残高が落ち始めています。

 一方、生産面では、FRBが同日発表した米地区連銀経済報告(ベージュブック)で、ほとんどの地区の製造業の活動が上向いていました。これは一見、利上げの動きを支えるものですが、よく考えるとそうとも言えなさそうです。

どういうことですか。

唐鎌:ベージュブックだけでなく、ISM(米国供給管理協会)の製造業景気指数も持ち直しています。しかし、双方とも、今年に入ってそれまでのドル高がドル安に転換したのを機に改善しています。それまではよくありませんでした。

 ということを考えると、ドル高につながる利上げは難しいということになります。こうした変化が一段と鮮明になってきたのではないでしょうか。